顧客体験を革新!EC・小売業界が注目すべき「次世代メッセージング」とは?海外成功事例から学ぶRCSの可能性

皆さんは、日々お客様とのコミュニケーションにどのようなチャネルを活用されていますか?メール、SMS、LINEなどのSNS、プッシュ通知など、様々な手段がある中で、それぞれの特性に合わせて使い分けていることと思います。
特にECや小売業界では、お客様にいかに魅力を伝え、購入へと繋げ、そして継続的な関係を築けるかがビジネスの成功に直結します。しかし、従来のメッセージングには限界も感じられているのではないでしょうか?
例えば、SMSは到達率が高く確実な連絡手段として重宝されていますが、送れる情報はテキストのみで文字数にも制限があり、視覚的な訴求や豊かなブランド体験を提供することは困難です。メールはリッチな表現が可能ですが、迷惑メールに埋もれたり、開封率が低かったりすることも少なくありません。特定のアプリを使ったメッセージングは機能が豊富ですが、お客様にアプリのダウンロードや登録の手間をかけてしまうというハードルがあります。
こうした課題を解決し、ネイティブのメッセージアプリ上でリッチでインタラクティブな体験を提供する次世代のメッセージング規格として、今、「RCS(Rich Communication Services)」が世界的に注目を集めています。
目次
RCSとは?SMSからどう進化したのか

RCSは、従来のSMSを大きく進化させた通信規格です。簡単に言うと、スマートフォンの標準メッセージアプリ(AndroidのGoogleメッセージや、iOSのメッセージアプリなど)を、より高機能なコミュニケーションツールに変える技術です。
具体的に、RCSで何ができるようになるのでしょうか。主な特徴をいくつかご紹介します。
- リッチメディアの送信:テキストだけでなく、高解像度の画像、動画、音声、GIFなどを送ることができます。商品画像やプロモーション動画などをメッセージ内で共有できるようになります。
- インタラクティブなボタン(応答候補・アクションボタン):ユーザーはあらかじめ用意されたボタンをタップするだけで返信したり、「ウェブサイトを開く」「電話をかける」「地図を表示する」といった特定のアクションを実行したりできます。これにより、スムーズな双方向コミュニケーションや顧客誘導が可能になります。
- カルーセル機能:複数の画像や情報をカード形式で横にスライド表示させることができます。複数の商品を一覧で見せたり、手続きの手順を分かりやすく示したりするのに便利です。
- 企業認証(Verified Sender):メッセージの送信元が正式に認証された企業であることが表示されます。ロゴやブランド名、認証マークが表示されるため、お客様は誰からのメッセージか一目で判断でき、安心して開封しやすくなります。これは、SMSでなりすましが多いという課題に対応する重要な機能です。
- 既読通知・入力中表示:チャットアプリのように、メッセージが読まれたかどうか、相手が入力中かどうかが分かります。これにより、よりリアルタイムでスムーズなやり取りができます。
- 文字数制限の緩和:SMSのような厳しい文字数制限がなくなり、より長いメッセージを送れるようになります。
これらの機能により、RCSは「お客様が普段使い慣れている標準メッセージアプリ」の中で、まるで企業の専用アプリのような、リッチでパーソナルな体験を提供できるのです。
関連リンク:RCSとは?特徴やSMSとの違い、活用事例を解説
https://kddimessagecast.jp/blog/sms/241210/
EC・小売業界におけるRCSの圧倒的な成果:海外事例から学ぶ
RCSは既に海外の多くのEC・小売企業で導入され、目覚ましい成果を上げています。いくつかの具体的な事例を見てみましょう。
- ブラジルの家電小売大手 Casas Bahia:分割払いサービスの利用促進キャンペーンでRCSを活用しました。リッチなメッセージで顧客に購入を促した結果、注文数が8%増加し、売上は17%増加しました。他の会話型チャネルと比較しても、コンバージョン率は1.6倍、ROIは6.2倍と大幅に向上しています。メッセージの既読率は24%、応答率は28%でした。
参照:Casas Bahia が RCS ビジネス メッセージを使用して小売販売を変革し、ROI を 6 倍に高める
https://developers.google.com/business-communications/rcs-business-messaging/success-stories/casas-bahia?hl=ja
- フランスのコーヒーブランド Nespresso:ホリデーシーズンのギフト提案キャンペーンにRCSを導入。ユーザーの好みに合わせたインタラクティブなメッセージで製品を紹介しました。その結果、開封率は73%に達し、クリック率はSMSの2.3倍に増加、購入意向もSMSの3.7倍に大きく向上しました。
参照:ギフトをパーソナライズ: ネスプレッソがメッセージを使用してホリデー ショッピングをパーソナライズした方法
https://developers.google.com/business-communications/rcs-business-messaging/success-stories/nespresso?hl=ja
- 米国の外食チェーン Subway:プロモーションのA/BテストでRCSとSMSを比較。RCSグループには商品画像や注文ボタン付きメッセージを配信し、双方向の注文体験を提供しました。その結果、RCS経由のクーポン利用転換率がSMSより大幅に増加し、サンドイッチ2個セットのプロモで+140%、$20セットメニューのプロモで+51%の改善が見られました。
参照:Subway tempts mobile customers with tasty sandwich deals via RCS Business Messaging
https://jibe.google.com/case-studies/subway/
- メキシコの塗料小売 Club Comex:SMSキャンペーンの低いエンゲージメント(CTR 2-3%)を改善するためRCSに切り替え。リッチメディアを活用したキャンペーンで、販売促進キャンペーンでは前年SMS比で収益が115%増加し、コンテンツ配信キャンペーンではCTRが20.6%に達するなど、SMSのベンチマークを大きく上回る成果を上げました。
参照:Club Comex: Campaign revenue growth of 115% with RCS Business Messaging
https://www.infobip.com/customer/club-comex
- インドの農業プラットフォーム BigHaat:農家向けECのマーケティングにRCSを活用。作物の生育段階に合わせた商品提案や、地域言語対応のメッセージを画像・ボタン付きで配信しました。その結果、広告費用対効果(ROAS)が103%向上し、注文1件あたりの取得コストが従来の3分の1にまで低減しました。CTRもSMSの3倍に伸長しています。
参照:BigHaat の成功事例 ターゲティングの効率化
https://developers.google.com/business-communications/rcs-business-messaging/success-stories/bighaat/?hl=ja
これらの事例から明らかなように、RCSはEC・小売業界において、単なる情報伝達に留まらず、売上、コンバージョン率、顧客エンゲージメント、ROIといった主要なビジネス指標を劇的に改善するポテンシャルを秘めているのです。
RCSでEC・小売業の顧客体験はどう変わるか?


EC・小売業界において、RCSはそのリッチな機能と双方向性を活かして、様々な場面で顧客体験を向上させ、ビジネス成果に貢献できます。
- パーソナルな商品提案・プロモーション:お客様の購入履歴や閲覧履歴に基づき、興味を持ちそうな商品をリッチな画像やカルーセルで紹介できます。期間限定のクーポンをボタン付きで配信し、タップ一つで購入ページへ誘導することも可能です。NespressoやSubwayの事例のように、CTRや購入意向を大きく高める効果が期待できます。
- 注文・配送通知のリッチ化:注文確認や発送通知を、ただのテキストではなく、購入商品の画像付きで送ることができます。配送状況の確認ボタンを設置すれば、お客様はメッセージ画面から直接追跡情報にアクセスできます。
- インタラクティブなカスタマーサポート:よくある質問への回答を応答候補ボタンで提示したり、チャットボットと連携して商品の問い合わせや在庫確認に対応したりできます。これにより、お客様は電話やメールを待つことなく、メッセージ上で問題を解決でき、顧客満足度の向上とサポートコストの削減につながります。
- 在庫切れ通知と再入荷リマインダー:在庫が復活した商品を画像付きで通知し、「購入する」ボタンからすぐに注文ページへ誘導できます。
- ロイヤルティプログラムの活性化:ポイント残高の通知や、ゲーム要素を取り入れたキャンペーンを通じて、会員のエンゲージメントを高めることができます。
これらのユースケースを通じて、RCSはEC・小売企業がお客様とのエンゲージメントを深め、より効率的にビジネス目標を達成するための強力なツールとなります。
RCS普及の現状と今後の見通し
RCSは現在、世界中のAndroid端末を中心に普及が進んでおり、2023年には月間アクティブユーザー数が10億人を超えました。そして、メッセージング市場における最大のニュースとして、Appleが2024年にiOSでのRCSサポート開始を発表したことは非常に重要です。これまでAndroidとiOS間で機能差があったネイティブメッセージングの互換性が向上し、RCSのユニバーサルな普及に向けた大きな一歩といえます。将来的には、より多くのユーザーがRCSメッセージを受け取れるようになり、企業がRCSを活用できる対象が飛躍的に拡大すると予測されています。
ただし、RCSの利用にはお客様の端末がRCSに対応していること、そしてデータ通信ができる環境にあることが必要です。また、キャリアによるサポート状況も地域によってばらつきがある場合があります。このため、全てのユーザーに確実にメッセージを届けるためには、RCSで配信できない場合に自動的にSMSに切り替えて送信するフォールバック機能が重要となります。
日本国内でのRCS活用に向けて


海外でこれほど多くの成功事例があるRCSですが、日本国内でのビジネス活用はまだ始まったばかりです。しかし、AppleのiOS対応も発表され、RCSが標準的なメッセージングとして普及する土壌は整いつつあります。
EC・小売企業が日本国内でRCS活用を検討する際には、いくつかのポイントが重要になります。
- RCSに最適なユースケースの選定:すべてのコミュニケーションをRCSに置き換える必要はありません。リッチな表現やインタラクティブ性がお客様の体験向上やビジネス成果に最も貢献できるシーンから試行的に導入するのが良いでしょう。
- 信頼できる配信パートナーの選定:RCS配信には、技術的な接続や送信元認証など、SMSとは異なる複雑さが伴います。また、前述のフォールバック機能など、確実にメッセージを届けるための仕組みを持つパートナーを選ぶことが重要です。
国内で法人向けメッセージ配信サービスをお探しなら、携帯電話番号を活用したメッセージングサービスを提供しているKDDI Message Castのような実績あるサービスが候補となるでしょう。KDDI Message Castは、高い到達率とAPI連携機能を持ち、企業の確実な連絡手段として広く利用されています。画像、動画、ボタンなどを使ったリッチなコミュニケーション(RCSの特徴)は、今後国内でも広がることが期待されますが、その際に重要となるのが、SMSへの自動切り替え(フォールバック)機能や、公式アカウントによる信頼性です。
企業はこのようなサービスを通じて、お客様の端末環境に左右されずに最大の到達率を維持しつつ、RCSの豊富な機能や、公式アカウントによる安心感をお客様に提供できるようになることが期待されます。
まとめ:RCSで顧客コミュニケーションの未来を切り拓く
RCSは、EC・小売業界における顧客コミュニケーションに新たな可能性をもたらす強力なツールです。従来のSMSやメールでは難しかったリッチな表現と双方向性を、お客様が普段使い慣れている標準メッセージアプリ上で実現することで、エンゲージメント、コンバージョン、売上、顧客満足度といった様々な指標を向上させるポテンシャルを持っています。
海外の成功事例を参考に、自社の顧客体験やマーケティング戦略にRCSをどのように活かせるか、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。国内でもRCSの環境が整いつつある今、信頼できるパートナーと共に、次世代メッセージングを活用した顧客コミュニケーションの革新に踏み出す絶好の機会と言えるでしょう。
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