ボイスボットは、コールセンターの「電話が繋がらない」「オペレーターの負担が大きい」といった課題を解決する手段として導入が進んでいます。

この記事では、ボイスボットの仕組みといった基本的な内容から、IVR・チャットボットとの違い、具体的な導入事例、導入のメリット・デメリットまで分かりやすく解説します。

ボイスボットとは?

ボイスボットとは、AI(人工知能)を活用し、顧客からの電話に音声で自動応答するシステムです。主にコールセンターでオペレーターの代わりに対応するシステムとして活用されています。ボイスボットで解決できない内容は適切なオペレーターに転送できるため、電話の一次対応として有用です。

ボイスボットは「Voice(声)」と「Robot(ロボット)」を組み合わせた造語で、学習済みのAIが電話での問い合わせ内容を音声認識し、最適な回答を音声で返します。

ボイスボットが音声を認識する仕組み

ボイスボットは、AIによる音声学習システムが基盤です。音声認識と応答の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 顧客からの入電
  2. 顧客の音声をAIが解析しテキスト化
  3. テキスト化された内容に基づき、回答文を検索または生成AIなどで作成
  4. 回答文を音声データに変換
  5. 音声合成によって顧客へ回答
  6. 顧客の発話を再度受信し、プロセスを繰り返す
  7. 必要に応じて担当オペレーターへ転送

顧客の発話の音声データをテキストに変換し、自然言語処理で内容を分析後、音声合成技術で回答するのがボイスボットの基本的な仕組みです。

ボイスボットとIVR・チャットボットの違い

顧客対応を自動化するシステムには、IVRやチャットボットもあります。それぞれの違いを解説します。

ボイスボットとIVRの違い

IVR(自動音声応答システム)は、顧客が電話機の数字ボタンを押すことで、録音済みの音声ガイダンスが流れるシステムです。例えば「ご契約内容の照会は1を…」といった案内がこれにあたります。

IVRがボタン操作を求める一方的な案内であるのに対し、ボイスボットは音声による自然な会話が可能です。この違いにより、ボイスボットは顧客に与える印象が良く、手間も少ないというメリットがあります。

また、IVRはSMS(ショートメッセージ)送信と組み合わせることで、ボイスボットとは異なる価値を提供します。例えば、音声では伝えにくいWebサイトのURLや手続きページのリンク、店舗の住所などをテキストで正確に送付できます。これにより、顧客は電話を切った後、自身のタイミングで問題を自己解決できるようになり、コールセンターへの再入電を防ぐ効果も期待できます。

関連リンク:IVRとは?メリットデメリットや仕組みを解説!
https://kddimessagecast.jp/blog/sonota/240307/

ボイスボットとチャットボットの違い

チャットボットは、テキストでのやり取りに特化した自動応答システムです。コミュニケーション手段が「音声か」「テキストか」という点が、ボイスボットとチャットボットの最も大きな違いです。

電話での会話を好む顧客にはボイスボットが、テキスト入力に慣れた顧客にはチャットボットが適しており、ターゲット層に応じて選択することが顧客満足度の向上につながります。

関連リンク:チャットボットとは?種類・仕組みやメリット、活用事例を解説
https://kddimessagecast.jp/blog/sonota/240304/

ボイスボットの活用シーン

ボイスボットは、主に以下のようなシーンで活用されています。

【コールセンター】受付対応

24時間365日対応を実現するツールとして、コールセンターの受付業務に活用されています。夜間や休日の定型的な問い合わせにボイスボットが対応することで、オペレーターの負担を軽減し、人件費の抑制にも繋がります。

【EC】商品の注文に関連する対応

ECサイトやカタログ通販の商品注文受付にもボイスボットは有効です。商品名や数量といった決まった言葉の認識精度は高く、注文内容をボイスボットが受け付け、スタッフが最終確認するといった運用で活用されています。

【ホテル・飲食】予約・受付対応

ホテルやレストランの予約受付は、ボイスボットの代表的な活用例です。日時を聞き取り、空き状況を確認して予約を完了させるフローを自動化できます。多言語対応のボイスボットなら、インバウンド需要にも対応可能です。

ボイスボットを導入するメリット

ボイスボット導入には多くのメリットがあります。

  • 機会損失の防止:オペレーターが対応できずに発生する「あふれ呼」や「放棄呼」を防ぎ、顧客を逃しません。
  • 夜間・営業時間外の対応:24時間365日、顧客の「今すぐ知りたい」というニーズに応えられます。
  • オペレーターの負担軽減:よくある問い合わせを自動化することで、オペレーターはより複雑な対応に集中できます。
  • 業務効率化:問い合わせ対応の自動化だけでなく、オペレーターへの引き継ぎ時も事前ヒアリング内容を共有できるため、対応がスムーズになります。
  • 定着率アップ:クレーム対応や定型業務の繰り返しといったオペレーターのストレスを軽減し、働きやすい環境を作ることで離職率の改善が期待できます。
  • 対応品質の向上・均一化:AIがデータに基づき常に安定した品質で対応するため、オペレーターのスキルに左右されません。
  • 顧客満足度の向上:データが蓄積されるほどAIの対応品質が向上し、待たされることなく疑問を解決できるため、顧客満足度の向上に繋がります。

関連リンク:コールセンターの業務を効率化する8つの方法!メリットや成功事例を紹介
https://kddimessagecast.jp/blog/sonota/240810/

ボイスボットを導入するデメリット

一方で、ボイスボット導入には注意点もあります。

  • 精度の課題:導入初期は音声認識や回答の精度が低い場合があり、顧客に不満を抱かせるリスクがあります。
  • 複雑な問い合わせへの対応:顧客の心情を汲み取る必要があるクレームなど、複雑で非定型な問い合わせへの対応は困難です。
  • 継続的な改善の必要性:AIの学習データを蓄積し、回答シナリオを定期的に見直すなど、精度を維持・向上させるためのメンテナンスが不可欠です。

ボイスボットの選び方・比較ポイント

自社に合ったボイスボットを選ぶための比較ポイントを紹介します。

  • 他システムとの連携性:CRMやSFAなどの既存システムと連携できるかを確認しましょう。API連携に対応していると活用の幅が広がります。
  • フォローアップ機能の有無:対応後にSMSやメールでアンケートや関連情報を送る機能があると、顧客満足度の向上や営業活動に繋げやすくなります。
  • 自動学習機能:AIが自動で学習する機能があれば、運用しながら回答精度が向上していくため、管理の手間を削減できます。
  • サポート体制:トラブル発生時に迅速に対応してくれるかなど、提供会社のサポート体制は必ず確認しましょう。
  • 同時接続件数の上限:自社の入電数に見合った同時接続件数を持つシステムを選ばないと、あふれ呼の原因となります。
  • 使いやすさ:専門知識がなくてもシナリオ作成などが直感的に行える、UIの分かりやすいシステムを選ぶと現場での運用がスムーズです。
  • 料金体系:初期費用や月額料金だけでなく、無料トライアルの有無も確認し、コストに見合った効果が得られるか検討しましょう。

ボイスボットの活用ポイント

ボイスボットの効果を最大化するためのポイントを解説します。

有人対応と連携する

ボイスボットだけで完結できない問い合わせは、スムーズにオペレーターへ転送できる体制を整えましょう。AIでは対応しきれない内容を人がカバーし、その内容をAIに学習させることが重要です。

精度の改善・ニーズの把握に努める

対応データは、顧客ニーズの宝庫です。データを分析してAIの学習やシナリオ改善に活かし、「問い合わせ完了率」などの指標を追いながら継続的に改善しましょう。

定期的にメンテナンスを行う

音声認識のミスや、学習不足による不適切な回答がないか、定期的にログを確認しメンテナンスを行いましょう。

ボイスボットの活用成功事例5選

ボイスボットの導入によって成功している事例は多数あります。ここではその中でもボイスボットの魅力を生かしている活用事例を紹介します。

ヤマト運輸株式会社

  • 会社概要(業界):運輸業
  • 課題:コールセンターへの集荷依頼電話が殺到し、顧客を待たせてしまうことによる機会損失が懸念されていました。
  • 導入効果:「AIオペレータ」を導入し、電話による集荷依頼や問い合わせ対応を自動化。これにより、すべての顧客からの電話に対応できる体制を構築し、機会損失の防止に貢献しています。

参照:
AIオペレータとはどんなサービスですか?|AIオペレータ|ヤマト運輸
https://faq.kuronekoyamato.co.jp/app/answers/detail/a_id/3841

AIオペレータによる電話受付で、すべてのお客さまからの集荷依頼を対応へ | ヤマト運輸
https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/info/info_210422.html

ハルメクホールディングス

  • 会社概要(業界):出版・通販業
  • 課題:通販カタログからの電話注文が集中し、あふれ呼による販売機会の損失が発生していました。
  • 導入効果:ボイスボットで注文受付を自動化した結果、放棄率が20〜30%から10%未満へと大幅に改善。営業時間外の注文も取り込めるようになり、売上向上に成功しています。

参照:
【チャレンジ賞特集】雑誌「ハルメク」の急拡大でコールセンターが逼迫。将来の躍進のための土台も作ったコールセンターのチャレンジとは!?。 | 株式会社ハルメクホールディングス
https://www.halmek-holdings.co.jp/news/haliro/2023/qua8pyymx

株式会社ハルメク・ビジネスソリューションズ - 通販の注文電話を自動応答化、放棄率を約20%改善し機会損失を縮小 | エンタープライズ向けAI SaaS
https://aisaas.pkshatech.com/success/halmek_01

株式会社NTTドコモ

  • 会社概要(業界):通信業
  • 課題:コールセンターにおけるサポート業務の効率化が求められていました。
  • 導入効果:ボイスボットによる自動応答化を進め、サポートへの入電のうち20%以上を自動化することに成功。問い合わせ内容の振り分け精度も70〜80%に達し、業務効率を大幅に向上させています。

参照:株式会社NTTドコモ ― サポートへの入電のうち20%以上をボイスボットで自動応答化 | エンタープライズ向けAI SaaS
https://aisaas.pkshatech.com/success/docomo_03

スマートモバイルコミュニケーションズ株式会社

  • 会社概要(業界):通信業
  • 課題:電話の殺到やカスタマーセンターの営業時間の制約により、顧客対応に限界が生じていました。
  • 導入効果:AIボイスボットとオペレーターが連携するハイブリッドな体制を構築。24時間365日の安定した品質での応対が可能となり、顧客の利便性と対応品質の均一化を実現しました。

参照:24時間365日の電話応対自動化によりユーザビリティの向上に貢献〜AIボイスボットとオペレーターのハイブリット活用〜 – 電話応対業務をDXするボイスボットサービス|AI Messenger Voicebot(AIメッセンジャーボイスボット)
https://www.ai-messenger.jp/voicebot/case/2442

株式会社広島銀行

  • 会社概要(業界):金融業
  • 課題:クレジットカード解約手続きの電話における顧客の待ち時間が課題となっていました。
  • 導入効果:解約専用ダイヤルにボイスボットを導入。解約完了率は80%台に達し、クレジットカード解約業務全体の約30%をボイスボットで完結させることに成功し、顧客の待ち時間を大幅に削減しました。

参照:クレジットカードの解約受付〜 お電話の約30%をボイスボットにて完結〜 – 電話応対業務をDXするボイスボットサービス|AI Messenger Voicebot(AIメッセンジャーボイスボット)
https://www.ai-messenger.jp/voicebot/case/1817

課題解決の“もう一つの選択肢”「KDDI Message Cast IVR」

AIを活用したボイスボットは非常に強力なツールですが、「導入コストや開発期間が気になる」「まずはあふれ呼対策から始めたい」といった企業様も多いのではないでしょうか。

そのような場合に最適なのが、IVRとSMSを連携させた「KDDI Message Cast IVR」です。電話をかけてきたお客様に対し、自動音声で対応し、FAQページや問い合わせフォームのURLをSMSで自動送信します。

【KDDI Message Cast IVRが解決できること】

  • あふれ呼・放棄呼対策: オペレーターが電話に出られない場合でも、SMSを自動送信し、お客様を自己解決へ誘導。機会損失を防ぎます。
  • 営業時間外の対応: 24時間365日、問い合わせの一次受付が可能になります。
  • 正確な情報伝達: 音声では伝えにくいURLや番号などの情報を、テキストで確実に届けます。

ボイスボットのような高度な会話は行いませんが、「電話が繋がらない」という顧客の不満を即座に解消し、オペレーターの負担を大きく軽減できる、費用対効果の高いソリューションです。

▼IVR(音声自動応答システム)連携 – SMS送信サービス「KDDIメッセージキャスト」
https://kddimessagecast.jp/feature/connect/ivr

まとめ

ボイスボットは、AIによる音声対話で問い合わせに自動応答するシステムであり、コールセンターの業務効率化や顧客満足度向上に大きく貢献します。

一方で、導入には精度の課題や継続的な改善が必要といった側面もあります。

コールセンターの自動化を検討する際、まず着手すべきは「あふれ呼」や「営業時間外の対応」といった、機会損失に直結する課題の解決です。

そのための現実的かつ効果的な一手として、「KDDI Message Cast IVR」は強力な選択肢となります。電話着信時にSMSを自動送信することで、顧客の自己解決を促し、入電数そのものを削減する効果が期待できます。IVRからボイスボットへ繋ぐといった連携も可能です。

「まずは低コストでコールセンターの自動化を始めたい」「すぐに効果を実感したい」とお考えでしたら、ぜひ「KDDI Message Cast IVR」の導入をご検討ください。