コールセンターは従来、電話による対応が中心でしたが、スマートフォンの普及やデジタル化が進んだ現在では、チャットボットやメール、SMSなど、多様なチャネルでの対応が求められるようになっています。
特にAI技術の発展により、顧客対応の自動化と効率化は急速に進んでいます。

この記事では、コールセンターにおける課題を整理した上で、チャットボットを導入するメリットや選び方、成功のためのポイントについて解説します。

目次

コールセンターにおける課題とは?

多くの企業において、コールセンターは顧客との重要な接点ですが、同時に深刻な課題も抱えています。チャットボット導入の背景には、以下のような課題解決へのニーズがあります。

人材不足と採用難

少子高齢化による労働人口の減少に伴い、コールセンター業界でも「求人を出しても人が集まらない」という状況が続いています。オペレーターの確保が難しくなる一方で、顧客からの問い合わせ件数は減少しないため、現場の負担は増すばかりです。このコールセンターの求人難とも言える状況を打開するため、省人化ツールとしてのチャットボットに注目が集まっています。

オペレーターの負担と定着率の低さ

顧客からのクレーム対応や、複雑化するサービス内容への対応により、オペレーターの精神的・肉体的負担は大きくなりがちです。これによる離職率の高さも課題であり、新人教育にかかるコストや時間も経営を圧迫します。

顧客満足度(CS)の低下

人手不足により電話がつながりにくくなると、「待ち時間」が発生し、顧客満足度の低下を招きます。また、対応するオペレーターによって知識や回答の質にバラつきがあることも、顧客体験を損なう要因となります。

コールセンター向けチャットボットとは?

コールセンター向けチャットボットとは、顧客から寄せられるよくある問い合わせに対し、Webサイトやアプリ上のチャットウィンドウを通じて自動回答するプログラムのことです。
頻繁にある質問と回答(FAQ)をあらかじめデータ化しておくことで、問い合わせに対して即座に回答を提示できます。

近年では、あらかじめ設定したルール(シナリオ)に従って回答する「ルールベース型」に加え、機械学習や生成AIを活用した「AIチャットボット」も普及しています。AI型は表記ゆれを吸収したり、より自然な対話ができたりするため、チャットボット検索においても高い精度を発揮し、柔軟な対応が可能になっています。

関連リンク:チャットボットとは?導入するメリットと効果を事例を合わせて解説!
https://kddimessagecast.jp/blog/sonota/240304/

コールセンターにおけるチャットボットの役割

コールセンターではチャットボットによってさまざまな問い合わせ対応を自動化できます。ここでは具体的にどのような役割を担えるのかを解説します。

定型的な回答ができる問い合わせ

コールセンターへの入電のうち、高い割合を占めるのが定型的な質問です。例えば、営業時間、営業所の場所、カタログの請求方法などが挙げられます。これらの「決まった答えがある質問」は、チャットボットが最も得意とする領域です。質問と回答の対応関係を明確にしてプログラムを組むことで、オペレーターの手を介さずに、利用者を正確な回答へと導くことができます。

既存のコンテンツで対応できる問い合わせ

Webサイト上にすでに詳しい解説ページがある場合、チャットボットはその誘導役として機能します。サービスの詳細仕様や複雑な料金プランなどは、チャットの短いテキストだけで説明するよりも、「詳しくはこちらのページをご覧ください」と該当ページのリンクを提示する方が親切な場合があります。チャットボットは、顧客が必要とする情報が掲載されているコンテンツへスムーズに案内する役割も担います。

FAQで対応できる問い合わせ

すでにWebサイト上に「よくある質問(FAQ)」ページを充実させている場合、チャットボットはそのデータベースを活用できます。FAQページへのリンクを案内するだけでなく、FAQのデータ(質問と回答のペア)をチャットボットに学習させることで、対話形式での回答が可能になります。膨大なFAQリストの中から顧客が自分で探す手間を省き、質問一覧から回答を抽出して提示することで、利便性を高めます。

コールセンター向けチャットボットを導入するメリットとは

コールセンターへのチャットボット導入は、顧客と企業の双方に大きなメリットをもたらします。代表的なメリットを見ていきましょう。

顧客の自己解決を促せる

チャットボットを導入することで、顧客が電話をかけずに問題を自己解決できる環境が整います。
「電話をするほどではないが、ちょっと確認したい」「電話がつながるのを待つのが面倒」という顧客にとって、Web上で完結するカスタマーサポートチャットボットは非常に便利です。また、対人ではないため、「こんな初歩的なことを聞いてもいいのだろうか」という心理的なハードルも下がります。自己解決率の向上は、顧客体験(CX)の向上に直結します。

業務負担を減らせる

チャットボットが一次対応を行うことで、有人窓口(電話や有人チャット)への流入数を抑制できます。
住所確認や手続き方法といった「調べればわかる問い合わせ」をボットが処理し、オペレーターは「人による対応が必要な複雑な相談」や「クレーム対応」に集中できるようになります。これにより、業務効率化が進むだけでなく、オペレーターの心理的負担の軽減にもつながります。

24時間365日の対応ができる

有人対応の場合、深夜や休日などの営業時間外は対応ができませんが、チャットボットなら24時間365日、いつでも即レスポンスが可能です。
顧客がトラブルや疑問を抱くのは営業時間内とは限りません。「今すぐ解決したい」というニーズに対し、時間を問わず回答を提供できることは大きなメリットです。機会損失を防ぎ、企業の信頼性向上にも寄与します。

一貫した対応で顧客満足度を上げられる

人間が対応する場合、どうしてもオペレーターの経験値やスキルによって回答の質やスピードにバラつきが生じます。
一方、チャットボットであれば、誰に対してもプログラムされた通りの一貫した品質で回答できます。誤った案内をするリスクも減らせます。また、AIを活用して回答精度を継続的に高めていくことで、より多くの顧客を満足させることが可能になります。結果として、チャットボットは安いコストで高品質なサポート体制を維持する手段となり得ます。

関連リンク:コールセンターにAI(人工知能)を導入するメリットは?導入方法や注意点も解説
https://kddimessagecast.jp/blog/sonota/240504/

コールセンター向けチャットボットの導入成功事例

実際の事例として、チャットボットの導入により成果を上げている企業のケースを紹介します。

株式会社マネーパートナーズ

株式会社マネーパートナーズでは、コールセンターの受付システムとしてチャットボットを活用しています。以前は選択肢を選んでいく形式のチャット対応を行っていましたが、回答にたどり着くまでの手数が課題でした。そこでAIチャットボットを導入し、顧客の入力に対してダイレクトに回答を提示できる仕組みを構築。正確かつスピーディーな回答が可能になり、顧客満足度の向上を実現しています。

参照:お客様サポート体制拡充へ チャットによるお問い合わせ方法が進化します | FX・外貨両替のマネーパートナーズ -外為を誠実に-
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000306.000017182.html

株式会社クレディセゾン

株式会社クレディセゾンでは、コールセンターのDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてチャットボットを導入しました。「顧客が必要な情報へ容易にアクセスできること」を重視し、自己解決を促進する運用を行っています。回答精度の改善を繰り返した結果、自己解決率を約57%まで引き上げることに成功し、有人対応の負荷軽減と顧客利便性の向上を両立しています。

参照:株式会社クレディセゾン ― 継続的改善で自己解決率を12%向上、チャット型対話エンジンでコールセンターのDXを推進 | エンタープライズ向けAI SaaS
https://aisaas.pkshatech.com/success/credit_saison_01/

ジェネシス株式会社

スマートデバイスの製造販売を行うジェネシス株式会社では、アフターサポート業務の品質向上を目指してチャットボットを導入しました。電話やメールに加え、24時間365日対応可能なチャットボットを用意することで、顧客がいつでも疑問を解消できる体制を構築。限られた人員でも高品質なサポートを提供できる体制を実現しています。

参照:導入事例 | 社内データと対話する生成AI 法人向けRAG OfficeBot
https://officebot.jp/case/

コールセンター向けチャットボットの選び方

市場には多種多様なツールが存在するため、自社に合ったものを選ぶことが重要です。チャットボット比較を行う際に確認すべきポイントを解説します。

有人対応との切り替えや営業時間外対応などの機能性

チャットボットだけですべての問い合わせを完結させるのは困難です。ボットで解決できなかった場合に、スムーズに有人チャットや電話へエスカレーション(引き継ぎ)できる機能があるかは重要です。また、「営業時間外のみボットを稼働させる」といった柔軟な設定ができるかどうかも確認しましょう。

AI機能の可否と精度

単純なFAQであればシナリオ型(ルールベース)でも十分ですが、表記ゆれへの対応や、複雑な質問に対応したい場合はAI搭載型が推奨されます。AI型を選ぶ際は、初期状態での回答精度だけでなく、運用後の学習のしやすさもポイントです。導入前にトライアルなどで実際の会話精度を確かめることをおすすめします。

ユーザーフレンドリーで使いやすいインターフェース

チャットボットは導入して終わりではなく、日々のメンテナンスが不可欠です。担当者が直感的にQ&Aを追加・修正できる管理画面(UI)であるかは非常に重要です。プログラミング知識がなくても扱える、いわゆる「ノーコード」でのチャットボットの作り方に対応しているツールであれば、現場主導で改善サイクルを回しやすくなります。

導入しやすい仕様と料金体系

導入のハードルが低いかどうかも確認しましょう。クラウド型(SaaS)であれば、サーバー構築などが不要ですぐに利用開始できます。また、社内のCRM(顧客管理システム)やCTI(電話システム)と連携できるかも選定の鍵となります。
費用については、初期費用だけでなく月額費用やオプション料金も含めたトータルコストで比較検討しましょう。スモールスタートができるプランがあるかどうかもチェックポイントです。

コールセンターでチャットボット導入を成功させるポイント

チャットボットは「導入すれば魔法のようにすべて解決する」わけではありません。成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

解決する範囲(スコープ)を明確にする

すべての問い合わせをチャットボットで対応しようとすると、シナリオが複雑になりすぎたり、回答精度が落ちたりして失敗の原因になります。「パスワードの再発行」や「料金照会」など、ボットで完結させやすい定型業務からスモールスタートし、徐々に対応範囲を広げていくのが成功の秘訣です。

定期的なメンテナンス(チューニング)を行う

チャットボットは運用開始後が本番です。利用者のログ(会話履歴)を分析し、「回答できなかった質問」や「誤った回答をした質問」を特定して、定期的にデータを修正・追加する必要があります。このPDCAサイクルを回し続けることで、回答精度と自己解決率は向上していきます。

複数のチャネルを組み合わせる

チャットボットは万能ではありません。高齢者層などチャットに不慣れな顧客や、緊急性の高い用件には、電話やSMSといった他の手段が適しています。チャットボット単体で考えるのではなく、電話、メール、SMS、有人チャットなど、複数のチャネルを適切に組み合わせ、顧客が選びやすい導線設計を行うことが重要です。

チャットボットと「SMS×IVR」の連携でコールセンター課題を解決

チャットボットはWeb上の問い合わせには有効ですが、「電話をかけてくる顧客」にはアプローチできません。そこで効果を発揮するのが、法人向けメッセージ送信サービス「KDDI Message Cast」が提供する「SMS」と「IVR(音声自動応答)」の活用です。
ここでは、コールセンターにおける具体的な活用事例を3つ紹介します。

活用事例1:電話の「あふれ呼」をSMSでチャットボットへ誘導

電話が混み合い、オペレーターにつながるまで長時間待たせてしまう「あふれ呼」は、顧客満足度を下げる大きな要因です。
KDDI Message CastのIVR機能を活用すれば、自動音声で「チャットボットでの案内」をアナウンスし、希望者の携帯電話にSMSでチャットボットのURLを即座に配信できます。
これにより、待ち時間に不満を持つ顧客をデジタルチャネルへスムーズに誘導でき、電話の呼量削減チャットボット利用率の向上を同時に実現します。

活用事例2:電話不通時の連絡をSMSで効率化(自動車販売会社の事例)

自動車販売会社のトヨタカローラ群馬様では、点検や車検の案内で顧客に電話をかけても、日中は繋がらないことが多いという課題を抱えていました。
そこで、不在着信となった顧客に対し、SMSで用件とWeb予約フォームのURLを一斉送信する運用を開始。その結果、何度も電話をかけ直す手間が削減されただけでなく、顧客が都合の良いタイミングでWebから予約できるようになったため、折り返しの連絡率や予約獲得率が大幅に向上しました。

導入事例:トヨタカローラ群馬様
https://kddimessagecast.jp/case/post-3300/

活用事例3:通話後のアンケート回収率が約2倍に(損害保険会社の事例)

ある損害保険会社のカスタマーセンターでは、対応品質向上のためにメールでアンケートを送っていましたが、回答率が低いことが悩みでした。
そこで、電話対応終了直後にSMSでアンケートフォームを送付する方法に切り替えたところ、メールに比べて気づかれやすく、開封率が高いため、回答率が従来の20%から40%へと倍増しました。
チャットボットでの対応後だけでなく、電話対応後のフォローにもSMSを活用することで、顧客の声をより多く収集し、サービス改善に役立てることができます。

▼資料DL「SMSの活用でコールセンターの課題を解決!」
https://kddimessagecast.jp/document/sms_ivr_call-center/

チャットボットで伝わらない内容は「映像」で解決

チャットボットはテキストでのやり取りが中心となるため、機器の故障箇所や細かい操作方法など、言葉で説明しにくい問い合わせには時間がかかる場合があります。

そうした課題には、アプリ不要でビデオ通話ができる「Liveアシスト」のようなツールの併用も有効です。オペレーターが顧客のカメラ映像を共有しながら、画面上に赤ペンで印をつけるなどして視覚的に案内できるため、チャットボットでは解決できない複雑な問い合わせもスムーズに完結できます。

KDDI Message Castと合わせて導入することで、あらゆる問い合わせに対応できる盤石なサポート体制が構築できます。

ビデオ遠隔通話「Liveアシスト」
https://kddimessagecast.jp/service/option/liveassist/

まとめ

コールセンターへのチャットボット導入は、人材不足の解消、業務効率化、そして24時間対応による顧客満足度の向上など、多くのメリットをもたらします。成功のためには、自社の課題に合ったツールの選定と、導入後の継続的なメンテナンス、そして有人対応やSMSなど他チャネルとの連携が不可欠です。

AI技術の進化により、チャットボットはより身近で高機能なものになっています。ぜひ自社のコールセンターに最適なチャットボットの導入を検討し、次世代の顧客対応体制を構築してください。