「RCSチャット」で進化する企業顧客対応

「顧客へのメッセージが届きにくくなった」「メルマガの開封率が年々下がっている」「LINE公式アカウントはブロックされがち」
このような課題を抱える企業のマーケティング・顧客対応担当者様は多いのではないでしょうか。
顧客とのコミュニケーション手法が多様化する現代において、企業からのメッセージを確実に届け、エンゲージメントを高めることはますます難しくなっています。
その強力な解決策として今、注目を集めているのが「RCS(Rich Communication Services)チャット」です。
本記事では、SMSの進化版ともいえるRCSチャットの基本から、ビジネスにおける具体的な活用法、成功事例、導入時の注意点までを網羅的に解説します。この記事を読めば、貴社の顧客対応を次のステージへ引き上げるヒントがきっと見つかるはずです。
目次
「RCSチャット」とは
RCSチャットとは、「Rich Communication Services」の略称で、携帯電話番号を宛先としてメッセージを送受信するSMSの次世代メッセージ規格です。従来のSMS(ショートメッセージサービス)がテキスト中心だったのに対し、RCSはチャットアプリのように写真や動画、スタンプの送受信、ファイル共有、グループチャットなどが可能です。
「RCSチャット」(Google)や「RCS」(Apple)、「+メッセージ」(国内キャリア)など、プラットフォームによって呼称が異なります。
日本ではKDDIが他キャリアに先駆けてiPhone・Android標準メッセージアプリでのRCS送受信に対応しており、顧客は新たなアプリをインストールする必要がなく、OSの垣根を超えたリッチなコミュニケーションが実現できるようになっています。
SMSと異なる点
RCSチャットとSMSは、電話番号を宛先とする点は共通していますが、機能面で大きく異なります。その違いを表で見てみましょう。
機能項目 | SMS | RCSチャット |
---|---|---|
文字数 | 全角最大70文字(長文は分割) | 最大3,072文字 |
画像・動画 | 送信不可 | 送信可能 |
ファイル共有 | 不可 | 可能 |
双方向性 | 限定的(返信は可能) | ボタン設置、クイック返信などインタラクティブな対話が可能 |
開封確認 | 不可 | 可能 |
送信者表示 | 電話番号のみ | 企業名・ブランドロゴ表示、認証マーク |
グループチャット | 不可 | 可能 |
情報源: Google Developers
このように、RCSチャットはSMSの「高い到達率・開封率」という強みを引き継ぎながら、表現力と双方向性を飛躍的に向上させたコミュニケーションツールなのです。
RCSチャットを利用するメリット
ビジネスでRCSチャットを活用するメリットは多岐にわたります。
- 高い開封率と視認性: プッシュ通知で気づかれやすく、メルマガ等に比べて圧倒的に高い開封率が期待できます。
- リッチな表現力による高い訴求力: 画像や動画、カルーセル(横スクロール形式のカード)などを活用し、テキストだけでは伝わらない商品やサービスの魅力を直感的に伝えられます。
- インタラクティブなコミュニケーション: 「予約する」「詳しく見る」といったボタンを設置でき、顧客のアクションをスムーズに促せます。アンケートなども簡単に行えます。
- 企業の信頼性向上: 認証済みの企業アカウントには「認証マーク」が表示されるため、なりすましを防ぎ、顧客は安心してメッセージを開封・反応できます。
RCSチャットを利用するデメリット
一方で、導入前に知っておくべきデメリットも存在します。
- 受信環境への依存: 顧客の利用するスマートフォンやOSがRCSチャットに対応している必要があります。ただし、非対応のユーザーには自動的にSMSでメッセージを送信する「フォールバック機能」があるサービスがほとんどです。
- コスト: テキストのみのSMSと比較して、機能が豊富な分、一通あたりの配信コストは高くなる傾向があります。しかし、その高い効果を考慮すれば、コストパフォーマンスは非常に高いと言えるでしょう。
最適な「RCSチャット」設計で顧客との距離を縮める
RCSチャットのポテンシャルを最大限に引き出すには、戦略的なメッセージ設計が不可欠です。顧客体験を向上させ、パーソナライズされたコミュニケーションを実現するためのポイントをご紹介します。
顧客体験を向上させるためのRCSチャット設計
リッチメディアの活用:テキストだけでは伝わらない情報を、画像や動画で補いましょう。
- クーポン: 割引クーポンを画像で配信し、視覚的にアピール。
- 新商品案内: 新商品のプロモーション動画を送り、利用イメージを膨らませる。
- 店舗案内: 地図画像を添付して、来店をスムーズに促す。
- カルーセル表示: 複数の商品やプランをカード形式で紹介し、左右にスワイプして見せる。
インタラクティブな要素の追加:顧客がタップするだけで次のアクションに進めるような、能動的な関与を促す仕掛けが重要です。
- 提案ボタン: 「ウェブサイトを見る」「資料請求」「問い合わせる」などのボタンを設置。
- クイックリプライ: 「はい/いいえ」「Aプラン/Bプラン」など、簡単な返信候補をボタンで提示。
- アンケート: 簡易的なアンケートを実施し、顧客の声を収集。
明確で分かりやすいメッセージ構成:リッチな機能を使っても、メッセージそのものが分かりにくければ意味がありません。
- 冒頭で要件を伝える: 何のメッセージなのかを最初に明確に示します。
- CTA(行動喚起)を明確に: 顧客に何をしてほしいのか(「タップして予約」「クーポンを提示」など)を具体的に記述します。
- 簡潔な文章を心がける: スマートフォンで読むことを意識し、長文は避けて簡潔にまとめます。
パーソナライズされたコミュニケーションの実現
画一的なメッセージではなく、顧客一人ひとりに合わせた「One to One」のコミュニケーションがエンゲージメント向上の鍵です。
個人名の活用:顧客の名前をメッセージに差し込む(例:「〇〇様、お誕生日おめでとうございます!」)それだけで、特別感を演出し、親近感を高めることができます。
セグメント別配信:顧客の属性や購買履歴に基づいてセグメント分けし、それぞれに最適な情報を届けましょう。
- 購入者向け: 「〇〇をご購入いただいたお客様へ、関連商品のご案内」
- 地域別: 「〇〇エリア限定のセール情報」
- 興味関心別: 「アウトドア好きのお客様におすすめのイベント情報」
タイミングを意識した配信:タイミングに合わせた情報提供は、顧客の行動を強力に後押しします。
- 予約リマインダー: 来店やサービスの予約前日にリマインドメッセージを送り、無断キャンセルを防止。
- セール告知: 期間限定セールの開始を知らせ、機会損失を防ぐ。
- ECサイトでのカゴ落ちリマインド: カートに商品を入れたまま離脱した顧客に、購入を促すメッセージを送る。
海外における「RCSチャット」の成功事例
海外での活用が先行する「RCSチャット」は、すでに多くの業界で成果を上げています。
業界別のRCS利用成功例
- 金融業界:
Fintonic(スペイン):スペインのフィンテック企業Fintonicは、アプリをダウンロードしたユーザーに対し、銀行口座連携を促すキャンペーンでRCSを活用しました。特に、金融機関を信頼していないユーザーの懸念に対応するため、視覚的に魅力的なコンテンツでセキュリティに関する情報などを提供しました。インタラクティブなメッセージングを提供した結果、同時に実施したSMSキャンペーンと比較して、RCSキャンペーンのコンバージョン率は2.5倍にも向上しました。RCSのコンバージョン率は15%だったのに対し、SMSは6%、メールやプッシュ通知は約5%でした。信頼構築が重要な金融サービスにおいて、RCSのリッチな表現力と信頼性の高さがコンバージョン率向上に貢献したことを示しています
(参照:発見からコンバージョンまで: Axis Bank が RCS で成長への道を模索)
https://jibe.google.com/success-stories/fintonic/
- EC・小売業界:
メキシコの塗料小売 Club Comex:SMSキャンペーンの低いエンゲージメント(CTR 2-3%)を改善するためRCSに切り替え。リッチメディアを活用したキャンペーンで、販売促進キャンペーンでは前年SMS比で収益が115%増加し、コンテンツ配信キャンペーンではCTRが20.6%に達するなど、SMSのベンチマークを大きく上回る成果を上げました。
参照:Club Comex: Campaign revenue growth of 115% with RCS Business Messaging
https://www.infobip.com/customer/club-comex
- 飲食業界:
米国の外食チェーン Subway:プロモーションのA/BテストでRCSとSMSを比較。RCSグループには商品画像や注文ボタン付きメッセージを配信し、双方向の注文体験を提供しました。その結果、RCS経由のクーポン利用転換率がSMSより大幅に増加し、サンドイッチ2個セットのプロモで+140%、$20セットメニューのプロモで+51%の改善が見られました。
(参照:Subway tempts mobile customers with tasty sandwich deals via RCS Business Messaging)
https://jibe.google.com/case-studies/subway/
「RCSチャット」運用上の注意点
効果的なツールである一方、運用にあたってはいくつか注意すべき点があります。
セキュリティ対策の確立
フィッシング詐欺などのリスクから顧客を守るため、「認証済みマーク」を取得できるサービスを選ぶことが極めて重要です。これにより、企業からの正式なメッセージであることを証明し、顧客に安心感を与えることができます。
プライバシーポリシーについて
RCSチャットは電話番号を利用するため、個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。「特定電子メール法」を遵守し、メッセージ配信にあたっては必ず事前に顧客からオプトイン(受信同意)を取得しましょう。また、配信停止(オプトアウト)の方法をメッセージ内に明記することも義務付けられています。
効果測定と改善の定期的な実施
配信して終わりではなく、効果を測定し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことが成功の鍵です。「開封率」「クリック率」「コンバージョン率」などのKPI(重要業績評価指標)を設定し、A/Bテストなどでメッセージのタイトルやコンテンツ、配信タイミングなどを最適化していきましょう。
「RCSチャット」の未来展望とビジネスへの影響
RCSチャットの可能性は、今後さらに広がっていくと予想されます。
AIとの連携による次世代サービス
AIチャットボットと連携させることで、24時間365日、顧客からの問い合わせに自動で応答する仕組みを構築できます。これにより、顧客満足度の向上とオペレーターの業務負荷軽減を同時に実現。将来的には、AIが顧客の意図を汲み取り、よりパーソナライズされた商品やサービスを提案する、といった高度な活用も期待されます。
新たな業種へのRCSチャットの応用可能性
現在は小売や金融での活用が目立ちますが、今後は不動産業界での内見予約、行政からの重要なお知らせ、教育機関からの連絡網、物流業界での配送通知など、あらゆる業種での応用が考えられます。電話番号という普遍的なIDを基盤とするRCSチャットは、社会インフラの一部として機能していくポテンシャルを秘めています。
ビジネスで「RCSチャット」を利用するならKDDI Message Cast
ここまで解説してきたRCSチャットのメリットを最大限に活かし、企業が安全に運用するためには、信頼できる配信サービスの選択が不可欠です。そこでおすすめしたいのが日本で最も積極的にRCS普及を推進しているKDDIの法人向けメッセージ送信サービス「KDDI Message Cast」です。
KDDI Message Castは、以下のような強みを持っています。
- 国内主要3キャリアに対応した高い到達率: 特定のキャリアに偏らず、幅広いお客様にメッセージを届けることが可能です。
- 豊富な機能と高い表現力: 本記事で紹介した画像・動画配信、カルーセル、ボタン設置といった機能を網羅し、企業の多様なニーズに応えます。
- 万全のセキュリティとサポート体制: 認証マークによるなりすまし対策はもちろん、導入から運用までを専門スタッフが手厚くサポート。初めてRCSチャットを導入する企業でも安心です。
RCSチャットによる顧客コミュニケーションの改革を目指すなら、豊富な実績と信頼性を誇るKDDI Message Castは最適な選択肢と言えるでしょう。
まとめ
RCSチャットは、単なるSMSの代替ではありません。アプリのインストール不要で高い開封率を維持しながら、リッチかつインタラクティブなコミュニケーションを実現する、次世代の顧客エンゲージメントツールです。パーソナライズされたメッセージで顧客との繋がりを深め、エンゲージメントを高めることは、顧客満足度の向上、そして売上拡大に直結します。
この記事を参考に、ぜひ貴社のビジネスにRCSチャットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。未来の顧客対応は、ここから始まります。
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