スマートフォンの普及に伴い、企業と顧客のコミュニケーション手段は多様化しています。これまで主流だったEメールや電話に加え、近年ではLINEなどのメッセージアプリ、そしてSMS(ショートメッセージサービス)の活用が進んでいますが、今、ビジネスの現場で急速に注目を集めているのが「Google メッセージ」です。

「Google メッセージなんて、ただのアンドロイドのSMSアプリでしょ?」と思われているなら、それは非常にもったいない誤解です。2025年現在、Google メッセージは単なるSMSアプリを超え、RCS(Rich Communication Services) という世界標準の規格を搭載した、強力なビジネスツールへと進化を遂げています。

本記事では、Google メッセージの基礎知識から、日本でおなじみの「+メッセージ(プラスメッセージ)」との違い、そしてAppleのiPhoneがRCSに対応したことによる市場の激変までを、IT業界の最新動向を交えて分かりやすく解説します。さらに、この新しい波をビジネスに活用するための最適解として、「KDDI Message Cast」の可能性についてもご紹介します。

Google メッセージとは?未来の顧客コミュニケーションを担うRCS機能

「Google メッセージ」とは、Googleが開発・提供しているAndroidスマートフォン向けの標準メッセージアプリです。しかし、その本質はアプリそのものではなく、裏側で動いている通信規格「RCS」にあります。

RCS(Rich Communication Services)が実現するリッチな体験

RCS(Rich Communication Services)は、従来のSMSやMMSの後継としてGSMA(GSM協会)によって策定された、次世代のメッセージング規格です。従来のSMSが「電話番号だけで送れるが、全角70文字まで、テキストのみ」という制約があったのに対し、RCSは以下のようなリッチなコミュニケーションを実現します。

<SMSとRCSの違い>
  • 長文メッセージ: 文字数制限を気にせず、詳細な情報を伝えられます(KDDI Message Castでは最大2,730文字)。
  • 高画質な画像・動画の送付: 商品画像やサービス紹介動画などを、圧縮による劣化を抑えて送信可能です。
  • 既読機能・入力中表示: LINEのように、相手がメッセージを読んだか、返信を書いているかが分かります。
  • グループチャット: 複数人でのスムーズな会話が可能です。

これらは、これまで専用のアプリ(LINEやFacebook Messengerなど)をインストールしなければできなかったことですが、RCSなら「携帯電話番号を知っているだけ」で、標準搭載のアプリを使ってこれらの体験を提供できるのです。

対応デバイスと今後の利用環境

Google メッセージの最大の特徴は、Android OSのエコシステムに深く統合されている点です。現在販売されているほぼ全てのAndroid端末にはGoogle メッセージがプリインストールされており、設定不要ですぐにRCSを利用できます。

さらに、2025年はRCSにとって「革命の年」となりました。長らくRCSに対応していなかったAppleが、iOS 18にてRCS(Universal Profile)への対応を完了させたのです。これにより、iPhoneユーザーとAndroidユーザーの間でも、SMSではなくRCSでのリッチなメッセージ送受信が可能になりました。

「相手がiPhoneかAndroidか」を気にする時代は終わり、携帯電話番号さえあれば、誰にでもリッチなメッセージを届けられるインフラが整ったと言えます。

徹底比較!Google メッセージと+メッセージの現状と違い

日本国内には、携帯キャリア3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が提供するRCSサービス「+メッセージ(プラスメッセージ)」が既に存在しています。「Google メッセージ」と「+メッセージ」、どちらもRCS規格を利用していますが、ビジネス視点では明確な違いがあります。

提供元の違い:グローバルテック企業 vs 国内キャリア連合

  • Google メッセージ: Googleが主体となり、世界中の通信キャリアやスマホメーカーと連携して推進している「グローバル・スタンダード(世界標準)」です。世界中のAndroidユーザーに加え、Appleの参入によりiPhoneユーザーもカバーする巨大なプラットフォームです。
  • +メッセージ: 日本の携帯大手3社が主導して開発した「国内ローカル・スタンダード」です。日本のユーザー向けに最適化されており、スタンプ機能などが充実していますが、利用は日本国内のキャリア契約者に留まる傾向があります。

利用者層と機能の比較

これまで、日本市場では「+メッセージ」が約4,000万人のユーザーを抱え、一定の地位を築いてきました。しかし、利用するには専用アプリのダウンロードや設定が必要な場合があり、全ユーザーに浸透しているとは言いがたい状況でした。

対してGoogle メッセージは、Android端末の標準機能として組み込まれており、ユーザー数は世界で10億人を超えています(2025年時点)。機能面でも、GoogleのAI技術(Geminiなど)との統合が進んでおり、メッセージの自動翻訳や、文脈に合わせた返信提案など、テクノロジー企業ならではの先進的な機能が実装されています。

企業が知っておくべき、両サービスのメリットとデメリット

企業が顧客にメッセージを送る際、最も重要なのは「到達率(リーチ)」と「開封率」です。

  • +メッセージの課題: 相手が「+メッセージ」アプリを利用していない場合、自動的に古いSMS(テキストのみ)で届いてしまうケースがありました。また、MVNO(格安SIM)ユーザーの一部で利用できないなどの制限もありました。
  • Google メッセージの強み: 特にKDDI(au)においては、2025年10月より、auネットワークを利用するすべてのスマートフォン(iPhone含む)に対し、RCS(Google メッセージ等)の利用を「標準で有効(オプトアウト方式)」に変更しました。

これは極めて大きな変化といえます。企業にとっては、「携帯電話番号宛に送れば、ほぼ確実にリッチなRCSメッセージとして届く」という環境が、au網を中心に整備されつつあることを意味します。グローバル標準であるGoogle メッセージ(およびiOSのメッセージアプリ)への対応は、もはや選択肢ではなく必須事項となりつつあります。

<RCS利用者増加推移と予測>

企業がGoogle メッセージにシフトすべき理由

なぜ今、多くの企業が従来のメールやSMSから、Google メッセージ(RCS)を活用したマーケティングにシフトしているのでしょうか。その理由は、単なる「流行」ではなく、明確なビジネス上のメリットがあるからです。

グローバルスタンダードへの対応

前述の通り、RCSはGSMAが定めた世界標準規格です。Google メッセージはこの規格に準拠しているため、将来的な互換性や拡張性が保証されています。一方、独自の仕様が多いツールは、OSのアップデートや市場の変化に取り残されるリスクがあります。グローバルなテクノロジーの進化(AI連携など)をいち早く享受できるのは、標準規格であるGoogle メッセージの大きな利点です。

顧客コミュニケーションの効率化とコスト削減

「郵送でのDM(ダイレクトメール)を送っているが、コストが高い上に読まれているか分からない」「電話をかけても繋がらない」——こうした悩みに対し、Google メッセージ(RCS)は劇的な解決策となります。

KDDI Message Castの導入事例では、以下のような成果が報告されています。

  • コスト削減: 郵送DM(1通 約80〜200円+制作期間)に対し、RCSは約20円/通〜で即時配信が可能。印刷や封入の手間もありません。
  • 高い反応率: 画像やボタンが付いたリッチなメッセージは、テキストだけのSMSと比較してクリック率が1.5倍〜2倍に向上します。
  • 業務効率化: 「電話に出ない」顧客に対し、RCSで要件と「折り返し電話ボタン」や「WEB手続きボタン」を送ることで、コールセンターの入電率をコントロールし、あふれ呼(電話がつながらない状態)を解消できます。

AppleのRCS対応がもたらすインパクト

2025年、iPhone(iOS 18以降)がRCSに対応したことは、日本市場において決定的な意味を持ちます。日本は世界的に見てもiPhoneのシェアが高い国です。これまで、iPhoneユーザー宛のメッセージは機能の低いSMSで送らざるを得ませんでしたが、これからはiPhoneユーザーに対しても、高画質な画像や動画、そしてセキュリティの高いメッセージを送ることができるようになりました。

「Androidにはリッチに、iPhoneにはテキストで」という出し分けの手間がなくなり、すべてのスマートフォンユーザーに対して、均質で高品質な顧客体験(CX)を提供できるようになったのです。

Google メッセージが切り開く、顧客体験の未来

Google メッセージ(RCS)は、単に「画像が送れる」だけではありません。企業と顧客のコミュニケーションを「一方的な通知」から「双方向の対話」へと変革させる力を持っています。これをビジネス向けに体系化したものが「RCS for Business(RBM)」です。

顧客との対話を深める「インタラクティブなメッセージ」活用法

RCS for Businessでは、以下のようなリッチカード(画像+テキスト+ボタンのセット)を利用できます。

  1. リッチカード(スタンドアローン): インパクトのある画像と、「予約する」「購入ページへ」「電話をかける」といったアクションボタンを1つの画面で表示。
  2. カルーセル: 複数の商品を横スクロールでカタログのように見せることができます。
  3. チップリスト(選択肢ボタン): 「はい」「いいえ」「詳細希望」などの選択肢ボタンを提示し、顧客はタップするだけで返信が可能。

例えば、配送予定の通知において、単に「明日届けます」と伝えるだけでなく、「時間変更」や「置き配指定」のボタンをメッセージ内に配置することで、顧客はアプリを開くことなく、その場で要望を伝えることができます。これにより、再配達コストの削減と顧客満足度の向上を同時に実現できます。

顧客エンゲージメントを最大化する新時代のメッセージ戦略

さらに重要なのが「信頼性」です。Google メッセージのビジネス利用では、「認証済み送信者(Verified Sender)」の仕組みがあります。

従来のSMSでは、知らない携帯番号からメッセージが届き、「これは詐欺かも?」と警戒されることがありました。しかし、RCS for Businessでは、企業のブランドロゴと企業名、そして認証バッジが表示されます。これにより、顧客は安心してメッセージを開封し、リンクをクリックすることができます。

「なりすまし」が社会問題化する中、送信元の信頼性を担保できるRCSは、金融機関や自治体など、セキュリティを重視する組織にとっても最適なツールと言えます。

業界別RCS活用事例:実際の成果から学ぶ

RCSの導入効果は、業界や用途によって様々です。ここでは、実際の企業がどのようにRCSを活用し、どんな成果を上げているのかを見ていきましょう。

【注目事例】業界トップクラスの実績:SMS×RCSハイブリッド戦略

通知物のリーディングカンパニーであるTOPPANエッジ株式会社は、自社のメッセージ配信サービス「EngagePlus®(エンゲージプラス)」において、KDDI Message Castを活用したSMS×RCSハイブリッド配信を実現しています。

課題

  • 郵便料金の値上げや紙代の高騰によるコスト増加
  • SMSだけでは伝えきれない情報量の制限
  • RCS対応端末がまだ限定的という現実

ハイブリッド戦略の仕組み

顧客のスマートフォンがRCSを受信できる環境にあるかを自動で判別し、以下のように最適な形式で送信。

  • RCS対応端末 → 画像や動画を含む表現力豊かなRCSを配信
  • 非対応端末 → 従来通りのSMSを配信

これにより、企業は対応端末の有無を気にすることなく、すべての顧客に確実にメッセージを届けながら、可能な限りリッチなコミュニケーションを実現できます。

成果

自治体での実証実験では、驚異的な結果を達成しています。

  • 開封率:88%
  • クリック率:30%

TOPPANエッジ様(菊地 淳史氏)のコメント:

「EngagePlus®は、SMS×RCSのハイブリッド配信を実現する携帯電話番号活用型のメッセージサービスです。一つのリストから自動で最適な形式で送り分けられる点が最大の特長です。これにより、企業様は対応端末の有無を気にすることなく、すべての顧客に確実にメッセージを届けながら、可能な限りリッチなコミュニケーションを実現するという理想的な戦略が可能になります。」

参考:TOPPANエッジ様 導入事例

不動産業界:紙DMからRCSへの転換による成果

不動産業界では、夏季のエアコン故障・クリーニングの案内を従来の紙のダイレクトメール(DM)からRCSに切り替えることで、大きな成果を上げています。

課題

  • 紙のDMは印刷・郵送コストが高い
  • 配送に時間がかかり、タイムリーな案内ができない
  • 開封率や反応率の測定が困難
  • エアコンの写真や清掃前後の比較を見せられない

RCSでの解決策

  • 高画質な写真:エアコン清掃前後の比較写真を掲載
  • ボタン形式の申込:「今すぐ申し込む」ボタンでワンタップ予約
  • タイムリーな配信:暑さが本格化する直前に即座に配信
  • 効果測定:開封率・クリック率をリアルタイムで把握

成果

  • 申込率が2.3倍に向上

この事例が示すように、RCSは以下のような季節性のあるサービスで特に高い効果を発揮します。

  • エアコン・暖房機器の保守案内
  • 物件の内見予約案内(写真と地図を同時送信)
  • 更新案内・契約更新のリマインド

参考:不動産会社さまの導入事例

導入前の確認ポイントとスムーズな移行

実際に企業がGoogle メッセージ(RCS)を導入する場合、個人のスマホから送るわけではありません。配信管理システム(ポータル)や、自社のCRM(顧客管理システム)と連携させるAPI経由での配信が一般的です。

既存システムとの連携性

導入にあたっては、「既存の顧客リストをそのまま使えるか」「SFA/CRMツールと連携できるか」がポイントになります。

例えば、KDDI Message Castでは、Salesforceと連携する機能「KDDI Message Cast for Salesforce」を提供しています。顧客データベースにある携帯電話番号に対し、トリガー(契約更新日の1ヶ月前、カゴ落ちなど)を検知して、自動的に最適なRCSメッセージを配信する——といった高度な自動化が可能です。

運用コストと初期設定

RCSの配信コストは、従来のSMSとは体系が異なります。一般的に、SMSは文字数に応じて課金(70文字ごとに料金加算)されますが、RCSは文字数に関わらず1通あたりの単価が固定されているケースが多く見られます。

KDDI Message Castの場合:

  • SMS: 1通あたり8.5円〜(通数による従量制、長文は複数通分課金)
  • RCS: 文字数制限(最大2,730文字)や画像の有無に関わらず、一律 20円/通(税別)など

長文の案内や画像を送る場合、SMSでは数通分(30円〜50円)かかってしまう内容も、RCSなら20円で済むため、「情報量が多いほどRCSの方がコストパフォーマンスが良い」という逆転現象が起きます。導入時は、自社が送りたいメッセージの内容と頻度をシミュレーションし、最適なプランを選択することが重要です。

また、KDDI Message Castは「フォールバック機能」を備えています。これは、RCSを送ろうとした相手が(古い端末などで)受信できない場合、自動的にSMSに切り替えてテキストのみを届ける機能です。これにより、「届かない」というリスクを最小限に抑えながら、可能な限りリッチな情報を届けることができます。

まとめ:Google メッセージが描く、日本のビジネスコミュニケーションの未来

2025年、AppleのRCS対応とキャリア各社の戦略転換により、日本のビジネスコミュニケーションは「RCS元年」とも呼べる転換点を迎えました。

  • 誰にでも届く: iPhone・Androidの壁がなくなり、携帯電話番号だけでリーチ可能。
  • リッチに伝わる: 画像、動画、長文で、アプリ並みの表現力を実現。
  • 安心して使える: 認証済みマークで、なりすましを防ぎ信頼を獲得。
  • アクションに繋がる: タップ一つで予約や購入へ誘導し、CVRを向上。

Google メッセージを中心としたRCSのエコシステムは、これまでの「届けるだけ」のメッセージングから、「顧客を動かす」メッセージングへと進化しています。

KDDIが提供する「KDDI Message Cast」は、この新しい波に完全対応しています。圧倒的な到達率を誇るSMS配信基盤に加え、リッチな表現が可能なRCS配信、そしてSalesforceなどのシステム連携までをワンストップで提供します。「まだSMSで十分」と考えている企業様こそ、コスト削減と売上向上の両方を実現するRCSの導入を、今すぐご検討ください。

コミュニケーションの未来はもう始まっています。KDDI Message Castで、その第一歩を踏み出しましょう。