製薬業界のDXとは?導入事例3選と課題・メリットを解説

目次
DXとは?

DX(Digital Transformation)は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革」する取り組みです。経済産業省の定義によると、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。
ビジネスでは業務改善、製品やサービス創出、企業文化の変革が期待されています。重要なのは、DXは手段であり目的ではないという点です。DXを推進する際には、「何のためにDXを行うのか」「どのような課題を解決するのか」を明確にすることが重要です。
関連記事: DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?DX推進のメリットと課題も解説
また、DX戦略の立案については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事: DX戦略とは?立案の手順と成功のポイントを解説
製薬業界でDXが求められている理由

事業コストの削減
日本の製薬企業では創薬のハードルが高まり、新薬開発を継続することが困難になっています。原因として薬剤費抑制、創薬手法の遅れ、投資規模の縮小、後発医薬品推進による利益減少が挙げられます。
こうした課題に対し、AIを用いたビッグデータ分析により効率的な研究開発を実現する「AI創薬」が進展しています。AI創薬では、膨大な化合物データを分析し、有望な候補を効率的に絞り込むことで、開発期間の短縮とコスト削減が可能になります。
医療業界全体のDX推進については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事: 医療DXとは?現場の課題と解決策を解説
感染症対策
新型コロナウイルスの流行により、MR業務のデジタル化やバーチャル治験が加速しました。バーチャル治験のメリットは、以下のとおりです。
- 幅広いデータ収集による医薬品の品質向上
- 来院困難な患者の参加が可能
- 治験期間の短縮
- 開発コストの削減
- オンラインでの迅速な相談対応
また、オンライン服薬指導サービスも普及し、患者と薬局間のコミュニケーションが効率化されています。患者への重要連絡には、SMSや+メッセージなどのメッセージングサービスが活用され、確実な情報伝達と患者の利便性向上に貢献しています。
+メッセージ(RCS)を活用することで、テキストだけでなく画像や動画を含むリッチなコンテンツを患者に送信でき、服薬指導や健康情報の提供がより分かりやすくなります。
関連情報: +メッセージ(RCS)を活用した医療コミュニケーション
業務や知識の属人化
製薬業界では膨大な開発資料により業務や知識が属人化しやすい傾向があります。創薬には長い時間がかかるため、一つのプロジェクトで膨大な資料が作成されます。これらの資料が特定の担当者に依存すると、生産性の低下や業務の一貫性が損なわれるリスクがあります。
デジタル化により情報を統一的に管理し、業務と知識の標準化を進めることが重要です。既存システムとAPI連携することで、部門を超えた情報共有と業務効率化を実現できます。
関連情報: 既存システムとのAPI連携でDXを加速
住民サービスの向上
地方自治体と製薬企業の包括連携協定により、地域包括システム構築や健康づくり施策が推進されています。自治体のDX推進に対応するため、製薬業界のデジタル化が求められています。
参考: 自治体DXの推進(総務省)
製薬業界がDXを進めるべき分野

研究開発
研究開発には多くのリソースが必要です。DXにより、ビッグデータの活用、リモート治験の実施、セキュリティの強化などが可能になり、コスト削減を実現できます。
治験においては、参加者への連絡にSMSを活用することで、確実な情報伝達と参加者の負担軽減が実現できます。また、IVR(音声自動応答システム)とSMSを連携することで、自動音声案内とSMS送信を組み合わせた効率的なコミュニケーションが可能です。例えば、IVRで治験スケジュールの音声案内を行い、その後SMSで詳細な案内URLを送信することで、参加者の理解度を高められます。
関連情報: IVR(音声自動応答システム)とSMSの連携
営業活動
医療機関とのコミュニケーションを担うMR(医薬情報担当者)は、新型コロナウイルスの流行により、オンラインでの情報提供に移行しました。インターネットの普及により、医療機関の情報収集手段も変化しており、訪問に依存しない情報提供体制の構築が求められています。
MR業務のデジタル化により、人的コスト削減と業務効率化が実現できます。また、CRMシステムとSMSを連携することで、医療機関への確実な情報伝達と、効率的なフォローアップが可能になります。Salesforceなどのクラウド型CRMとSMS配信サービスを統合することで、医療機関ごとの情報管理と最適なタイミングでの連絡が実現できます。
関連情報: Salesforceと連携したSMS配信
異業種との連携
国内医薬品市場の成長が鈍化する中、製薬企業は異業種との連携により事業の多角化を進めています。
医療DX推進により、以下のような異業種とのコラボレーションが拡大しています。
- 認知機能に応じた金融取引サービス(金融業界との連携)
- IoT技術を活用した高齢者見守りサービス(IT業界との連携)
- 患者の運動療法を支援するフィットネスプログラム(スポーツ業界との連携)
これらの連携により、製薬企業は医薬品提供だけでなく、患者の生活全般を支援するサービスを展開し、新たなビジネス機会を創出しています。
在庫管理
医薬品の在庫管理は、手作業で行うと多くの労力を要します。発注、配送、分析、取引など、人的ミスが発生しやすい業務です。
デジタル化により、以下のメリットが得られます。
- 作業負荷の軽減
- 作業時間の短縮
- ヒューマンエラーの削減
- 人材不足への対応
既存の在庫管理システムとAPI連携することで、SMSによる在庫通知や発注リマインドなどの自動化も実現できます。例えば、在庫が一定量を下回った際に、自動的に担当者へSMSで通知することで、欠品を防ぐことができます。
参考: 安定供給(東和薬品)
関連情報: 既存システムとのAPI連携
製薬業界のDXの課題とは

患者への普及率
バーチャル治験の認知度が低く、普及率も高くありません。新型コロナウイルスの流行によりオンライン診療への関心は高まりましたが、まだ抵抗感を持つ患者も多いのが現状です。
患者がオンライン診療に不安を感じる理由としては、以下が挙げられます。
- 対面診療と比べて診断の精度が低いのではないかという不安
- オンラインでの医師とのコミュニケーションに慣れていない
- デジタルツールの操作が苦手
また、ウェアラブルデバイスについても、「常に装着することへの抵抗感」「個人情報漏えいやプライバシー侵害への懸念」があります。
こうした課題に対し、SMSは携帯電話の標準機能として誰でも利用できるため、患者へのデジタルサービス普及の入口として有効です。オンライン診療の予約確認や服薬指導のリマインドなど、患者の負担を軽減しながらDXを推進できます。
関連記事: 医療DXとは?現場の課題と解決策を解説
導入コスト
DXの導入には、外部委託の場合の費用と社内開発の場合のコストがかかります。
外部委託の場合は、外注費用やベンダーとのコミュニケーションコストが発生します。社内開発の場合は、IT人材の確保と育成が課題となり、運用費用も発生します。
ただし、クラウドサービスを活用することで、初期コストを抑えることができます。オンプレミス型のシステムと比べて、クラウド型は初期投資が少なく、利用した分だけ費用を支払う従量制のため、コストを柔軟に管理できます。
KDDI Message Castは、初期費用・月額費用0円で利用でき、使った分だけの従量課金制のため、コストを抑えながらDXを推進できます。
製薬業界へのDX導入のメリット

患者の利便性向上
製薬業界のDXがもたらすメリットのひとつが、患者の利便性向上です。例えばITを導入したことによって、次のようなことが可能となりました。
- 処方薬を非対面で受け取れることで、感染リスクを減らせる
- 処方薬の自宅配送を利用することで、スムーズに受け取れる
- 電子版お薬手帳を利用することで、服薬情報を一元的かつ継続的に管理できる
- 電子処方箋によってより適切な投薬が受けられる
実際に、医療機関でのSMS活用により、患者への重要連絡が効率化された事例があります。
医療法人隆誠会延岡保養園様では、入院費用案内をSMSで行うことで、郵送工数を月8時間から2時間へ削減し、郵送費も年間80,640円から19,200円へ削減(約3/4削減)することに成功しました。また、入金率も80%から85%へ5%向上しています。患者への連絡が確実に届くことで、費用の透明性が高まり、患者満足度の向上にもつながっています。
導入事例: 医療法人隆誠会延岡保養園様の導入事例
また、一般社団法人中部地区医師会検診センター様では、人間ドック予約のリマインドSMSを導入することで、キャンセル率を大幅に改善しました。具体的には、午前の部で6%から2〜4%へ、午後の部で13%から2%へキャンセル率が低下しています。これにより、最大120万円の売上減を阻止し、再予約に伴う工数も125〜200分削減しています。
導入事例: 一般社団法人中部地区医師会検診センター様の導入事例
このように、デジタル技術の活用は患者の利便性向上だけでなく、医療機関の業務効率化にも大きく貢献します。
業務の効率化
DXの導入により、在庫管理や事務作業の負担が軽減されます。また、情報共有が迅速化し、属人化した業務が標準化されます。
実際に、大阪市立総合医療センター様では、診断書・書類完成連絡をSMSで行うことで、電話時間を1日あたり130分削減し、4ヶ月で12万円の電話代を削減することに成功しました。また、書類完成後1週間以内の交付率も5.4%向上しています。電話での連絡は、患者が不在の場合に何度もかけ直す必要がありますが、SMSであれば確実に届き、患者の都合の良いタイミングで確認できます。
導入事例: 大阪市立総合医療センター様の導入事例
このように、SMSを活用することで、電話連絡の負担を大幅に軽減し、業務効率化と患者サービスの向上を同時に実現できます。
業務効率化により生まれた時間を、患者への丁寧な説明や診療の質向上に充てることができ、医療機関全体のサービス品質向上につながります。
災害対策
DXは、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)としても有効です。電子カルテ、在庫管理システム、電子処方箋などのデジタルシステムを導入することで、災害時にも別の端末から必要な情報にアクセスできます。
クラウド型システムとオンプレミス型システムにはそれぞれメリットがあります。クラウド型は、データがクラウド上に保存されるため、物理的な被害を受けにくく、どこからでもアクセスできます。一方、オンプレミス型は、自社でデータを管理するため、セキュリティを厳密に管理できます。
いずれの場合も、バックアップを取ることで、サイバー攻撃や物理的な災害に備えることができます。
また、製薬企業のネットワークを全国の工場でつなぐことで、ある工場が被災しても他の工場でカバーでき、医薬品の安定供給を維持できます。
参考: 安定供給(東和薬品)
製薬業界におけるツールを用いたDX成功事例

創薬の事例
大日本住友製薬とExscientia Ltd.は、AI活用により化合物「DSP-1181」を創製し、強迫性障害を対象としたフェーズ1試験を開始しました。通常、候補化合物の創製には約4年かかるところ、本プロジェクトでは1年未満で臨床試験に進むことができました。これは従来の開発期間の4分の1以下という驚異的なスピードです。
参考: 大日本住友製薬とExscientia Ltd.の共同研究 人工知能(AI)を活用して創製された新薬候補化合物のフェーズ1試験を開始
研究開発の事例
田辺三菱製薬株式会社は、ディープラーニングとスパースモデリングの技術を活用し、フェノタイプスクリーニングの画像解析を実施しました。この取り組みにより、専門家の判断を必要とせずに大量の画像を解析できるようになりました。
スパースモデリングの採用により、解析時間が大幅に短縮され、評価の根拠も説明可能になりました。従来は専門家が一つ一つ確認していた画像を、AIが自動的に解析することで、研究開発のスピードが飛躍的に向上しています。
参考: データ駆動型創薬の加速化をめざし薬物スクリーニング用AI技術を構築
サービス創出の事例
エーザイ株式会社は、保険産業や食品産業など異業種と連携し、エコシステムを構築するサービスを展開しています。
本田技研工業、大分大学、臼杵市医師会との共同研究では、認知機能と身体能力、運転の関係について研究しました。この研究では、脳の健康度チェックツールとウェアラブルデバイスを活用し、運転を通じて認知機能の低下を検知し、個々に合わせた運転の提案を行うサービスの構想が進められています。
このように、製薬業界では異業種との連携により、医薬品の提供だけでなく、患者の生活全般を支援する新たな価値創造とビジネス機会の拡大を実現しています。
DX推進にはSMSの活用がおすすめ

製薬会社では、治験の参加者とのコミュニケーションや、服薬指導のフォローアップ、副作用情報の配信などにSMSを活用しています。電話と比較して、SMSは以下のメリットがあります。
- 相手が不在でも確実に情報を届けられる
- テキストで記録が残るため、後から確認できる
- 電話よりも気軽にコミュニケーションできる
- URLを掲載して、詳細情報へ誘導できる
このような利便性の高さから、医療機関や製薬企業でのSMS利用が広がっています。
KDDI Message Castでは、最大660文字の長文SMSや、画像・動画を含む+メッセージ(RCS)の送信も可能です。例えば、服薬指導で薬の写真を送ったり、健康情報を動画で配信したりすることで、患者の理解度を高められます。
また、短縮URL機能を活用することで、患者向けの情報ページへのリンクを短く見やすく掲載できます。長いURLをそのまま掲載するとSMSが見づらくなりますが、短縮URLを使えば、スッキリとした見た目で情報を提供できます。
関連情報: +メッセージ(RCS)で画像や長文を送信
関連情報: 短縮URL機能で見やすいリンクを配信
さらに、KDDI Message Castには、誤配信を防止する機能やオプトアウト機能も搭載されています。医療情報は機密性が高いため、誤って別の患者に送信してしまうと重大な問題になります。誤配信防止機能により、送信前に宛先を確認でき、安心して利用できます。
法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」
KDDI Message Castは、携帯電話番号を利用したSMS配信サービスです。最大660文字の長文配信や、+メッセージ(RCS)による画像・動画の送信が可能です。
従量制の料金体系で初期費用や定額費用が不要なため、コストを抑えながら導入できます。API連携により既存システムからの自動配信や、双方向SMSによる患者からの返信受信も可能です。
また、システム開発が不要な入稿ポータルも提供しており、管理画面から簡単にSMSを配信できます。
主な機能:
- 管理画面(入稿ポータル)による簡単配信
- 既存システムとのAPI連携
- Salesforceとの連携
- +メッセージ(RCS)による画像・動画配信
- IVR(音声自動応答システム)接続
- 短縮URL機能
- 誤配信防止機能
- オプトアウト機能
- 到達率98%以上
- 市場シェアNo.1(16.59%)
KDDI Message Castでは、最大2ヶ月3,000通の無料トライアルをご用意しています。まずはお試しいただき、医療機関や製薬企業の業務にどのように活用できるかをご確認ください。
詳細なサービス内容や料金については、以下からお問い合わせください。
まとめ
製薬業界のDXは、目的を明確にして推進することで、より良いサービスの提供、業務負担の軽減、新しいサービスの創出が可能になります。
創薬のAI活用、MR業務のデジタル化、患者サービスの向上など、製薬業界では様々な分野でDXが進んでいます。一方で、患者への普及率や導入コストなどの課題もあります。
製薬業界でもDXに関するセミナーが多数開催されていますが、デジタル化への抵抗感がある企業も多いのが現状です。DX支援サービスを活用しながら、段階的に製薬業界のDXを進めていくことが重要です。
SMSは、患者とのコミュニケーションを効率化し、確実な情報伝達を実現できるツールです。KDDI Message Castでは、最大2ヶ月3,000通の無料トライアルをご用意しています。まずはお気軽にお試しください。
無料トライアル(最大2ヶ月3,000通)のお申し込みはこちら
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この資料でわかること
- SMSの利用実態と他コミュニケーションツールとの比較
- ビジネスシーンにおけるSMSの代表的な利用用途
- 「KDDI Message Cast」の導入事例
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