共通の情報を多くの人に一斉に配信したり、ときには顧客ひとりひとりの興味・関心に沿ったメールを届けることで、商品やサービスの特性を活かした高い宣伝効果が期待できるのがメールマーケティングです。近年では、AIやデータ分析の技術を活用しながら、その市場規模をさらに拡大しつつあります。

本記事では、ますます注目を集めるメールマーケティングの活用方法や、そのメリット・デメリット、さらには成功の秘訣についても詳しく解説します。

メールマーケティングについて

メールマーケティングとは、取得したメールアドレス宛てにメールを送付し、集客やコンバージョンを促すマーケティング手法です。

メールマーケティングの歴史は長く、世界初のメール広告は1978年に配信されたといわれています。その後、1990年代に携帯電話が普及したことで、多くの人が気軽にメールを利用するようになり、有効なマーケティング手段として活用されるようになりました。

「古い手法では?」と思われるかもしれませんが、現在は、最新技術であるAIやデータ分析技術を駆使して、より精度の高いメールマーケティングが展開されています。

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メールマーケティングの重要性が増している背景

昨今のSNSの普及に伴い、メールマーケティングの必要性が薄れつつあると思われがちですが、実はメールマーケティング市場は世界的に拡大しています。

現在、メールマーケティングが注目されている理由のひとつに、進化したAIを活用したメール配信ツールがあります。顧客を属性やニーズに合わせて細かくセグメント化し、それぞれに最も効果的な内容のメールを作成・送信することが可能なため、より高度なマーケティング効果が期待できます。

また、顧客に対して定期的にアプローチをかけ続けられる点も大きなポイントです。たとえば、問い合わせのあった顧客にはフォローアップメールを、商品を購入した顧客にはリピートを促すメールを、長期間アクションのない顧客にはリマインドや関心を引く内容のメールを、それぞれの状況に応じて順を追って送ることで、一方的な情報配信ではなく、顧客とのコミュニケーションを深めることができます。

メールマーケティングのメリットとデメリット

現在、需要が高まっているメールマーケティングですが、利点だけではなく注意する点もいくつかあります。ここでは、メールマーケティングのメリットとデメリットを解説します。

メールマーケティングのメリット

まずは、メールマーケティングに期待できるメリットを紹介します。

低コストで始めることが可能

メールマーケティングに最低限必要なツールは、効果測定が可能な配信ツールのみです。メール配信ツールには、月額数万円のものから無料のものまでさまざまな種類があり、社内でメールを作成できれば大幅にコストを抑えることができます。

ただし、コストをかけて大きな効果を上げたいという場合は、必要に応じてマーケティングのプロに外注したり、高度な配信ツールを導入してAIによるメール作成やデータ解析を行うなども可能です。

効果検証をすることが容易

メール配信ツールには、到達率や開封率、記載したURLのクリック率などのデータを取得できるものが多くあります。2種類のメールを用意して一部の登録者にランダムで配信し、より効果の高いメールを採用するABテストが行える配信ツールもあります。

これらのデータを基にメールを改善し、再びその結果を検証する作業を繰り返すことで、メール作成スキルを高め、より効果的なメールを配信することができます。

メールマーケティングのデメリット

メールマーケティングには大きなメリットがある反面、デメリットも存在します。

中長期的に運用する必要がある

メールマーケティングは、効果があらわれるまでに時間がかかることがあります。まずはできるだけ多くの顧客にメールアドレスを登録してもらう必要があります。さらに、顧客の状況に合わせて継続的に情報を発信することで効果が表れることが多く、テレビCMやチラシのような即効性は得られにくいと考えられます。そのため、中長期的な視点で運用していく体制が必要です。

コンテンツの制作にコストがかかる

メールでマーケティング効果を上げるためには、顧客が魅力的だと感じるメールの作成が必須です。クオリティの低いメールを送ると、スパムメールと判断されたり、メールの登録を解除されてしまう可能性もあります。質の高いコンテンツを継続的に制作し続けるには、時間と人件費、あるいはプロに依頼するための外注費など、一定のコストがかかります。

メールマーケティングの種類・方法

一口にメールマーケティングと言っても、顧客の属性や、期待する効果によって適した手法が異なります。ここでは、代表的なメールマーケティングの手法を紹介します。

メールマガジン(メルマガ)

メールマガジンは、登録者に定期的に配信するメールです。同じ内容をすべての配信希望者に送信するため、新商品やキャンペーン、業界ニュースなど、多くの登録者が「面白い」「有益だ」と感じる内容のメールを配信する必要があります。魅力的なメールを継続的に配信することで、ブランドの認知度向上やファンの獲得に役立ちます。

ステップメール

顧客の行動に対し、あらかじめ設定したシナリオ通りに段階ごとのメールを配信する手法です。例えば、ECサイトで購入した顧客に対し、「お礼メール」→「商品発送のお知らせ」→「購入した商品のお役立ち情報」→「購入商品と関連した商品の紹介」→「セールや新商品の案内」といった手順で、タイミングを見計らってメールを送信します。

これにより、商品を購入した顧客のリピート率をあげたり、資料請求した顧客の購買意欲を高めるなどの効果が期待できます。

広告

定期的に配信しているメールマガジンの一部に広告を掲載する方法と、広告専用のメールとして配信する方法があります。

広告メールの形式には、動画や画像が埋め込める「HTMLメール」と、文字だけのシンプルな「テキストメール」があります。「HTMLメール」は情報量が多く、商品やサービスの魅力が伝わりやすいというメリットがありますが、受信者の環境によって画像や動画が表示されない可能性があります。

一方で、「テキストメール」は、受信環境を問わず安定して表示されますが、情報量が限られてしまうというデメリットがあります。それぞれの特徴を理解し、告知したい商品やサービスに合ったメールスタイルを選びましょう。

ターゲティングメール

年齢・性別・居住地・趣味嗜好など、登録されているデータを基に、条件に合った登録者だけにメールを配信する方法です。バースデーメールや地域限定の割引クーポン、映画好きの登録者に映画情報を送るといった配信は、登録者の興味を引きやすく、開封率を高めることができます。

上記の条件に加え、特定の商品のページを閲覧したことがある人や、定期的にWebサイトを訪れてくれている人などのデータを組み合わせることで、より精度の高いターゲティングメール配信が可能です。

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リターゲティングメール

登録者の行動をきっかけとしてメールを配信する手法です。例えば、ショッピングカートに商品を入れたまま数日放置している顧客に購入を促すメールを配信したり、メール広告で商品をクリックした顧客に商品の割引クーポンを配信するなど、ターゲットを絞り、適切なタイミングで効果的な情報を送ることができます。

メールマーケティングを実施する方法・手順

ここでは、具体的にメールマーケティングを実施する手順を紹介します。使用するツールや実施する手法によって手順が異なることもありますが、大まかな流れは以下の通りです。

  1. 目的設定
  2. メールアドレスの獲得(フォーム、キャンペーン、資料DLなど)
  3. メールリストの作成・管理(MAツール等)
  4. 配信ツールの設定・作成(MAツール等)
  5. テスト配信(本配信)
  6. 配信結果の分析(開封率・クリック率など)
  7. 改善・最適化(リスト、件名、本文、配信タイミング等)
  8. 再配信・継続運用

キャンペーン目標の明確化

解決したい課題や達成したい目標を特定し、それに基づいて、より具体的で測定可能な目標を設定します。例えば「開封率を25%まで上げる」「メールからの資料請求を1%増やす」など、達成・未達成が一目でわかる数値目標を設定することで、効果を検証しやすくなります。

メールアドレス収集と配信先リスト作成

アンケートや資料ダウンロード、無料サービスの登録などを利用して、顧客のメールアドレスを獲得し、メール配信リストを作成します。登録の際、年齢や性別のほかに職業、趣味、生活スタイルといった情報が多いほど、ターゲティングメールによるマーケティングの精度が向上します。ただし、入力途中での離脱のリスクを考慮して、収集する情報は厳選するとよいでしょう。

なお、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」により、広告メールを配信する場合は、メールアドレスを取得する際に、顧客から広告メール受信の承諾を得る必要があります。承諾を得ていない顧客のメールアドレスは使用できないため、注意が必要です。

メールコンテンツ作成

「誰に何のために何を送るのか?」を明確にしてメールを作成しましょう。具体的なペルソナ(自社の商品やサービスを利用する可能性が高い顧客像)を設定すると、的を絞り、効果的なメールが作成しやすくなります。また、ステップメールを作成する場合は、カスタマージャーニーマップ(顧客が商品やサービスを認知し、購入・利用に至るまでのプロセスを道筋として可視化したもの)を作成すると、各ステップで送るべきメール内容が明確になります。

メール送信

配信リストとメールコンテンツが完成したら、顧客へのメール配信を行います。大量のメールを配信するには、メール配信ツールが必要です。適した配信ツールは、配信数や測定したい効果、予算などによって異なります。ツールを選ぶ際は、配信精度(到達率、配信速度など)、効果測定機能、価格、サポート体制などを確認するとよいでしょう。

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効果測定・分析と改善策検討

メールマーケティングにおいて、メール配信後の効果測定は重要なプロセスのひとつです。目標に対する達成率や、開封率、クリック率などを検証し、改善点を洗い出しましょう。これらの改善点を次回のメール配信に反映させることで、より効果的なメールマーケティングが可能になります。

メールマーケティングのポイント

メールマーケティングを成功させるためには、どのような点に注意すればよいでしょうか。ここでは、メールマーケティングを実施する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

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件名を工夫する

多くの広告メールは、開かれることなく埋もれてしまいます。開封を促すためには、メールを開きたくなるような魅力的な件名が必要です。受信者が一目で「自分に関係がある」「得をする」と感じられるような件名は、メールの開封率の上昇に繋がります。特別感や具体的な数字などを盛り込みつつ、簡潔にまとまった件名を工夫しましょう。

ファーストビューにこだわる

受信者がメールの本文に目を通す時間は非常に短いため、冒頭にインパクトのあるコメントを配置したり、内容が伝わりやすいレイアウトを工夫したりすることで、コンバージョンにつながる可能性が高まります。また、クリックして欲しいURLは、ファーストビュー内に収まるように設置すると、クリック率の向上が期待できます。スマートフォンでの表示を意識したデザインも重要なポイントです。

メッセージの焦点を定める

1通のメールにいくつものメッセージを詰め込むと、焦点がぼやけてコンバージョン率が下がる可能性があります。最も伝えたい趣旨をひとつに絞り、それ以外の要素を削ぎ落とすことで、望む効果が得やすくなります。

配信のタイミングを図る

同じメールでも配信のタイミングによって反応が大きく変わります。受信者が確認しやすい曜日や時間帯を把握することで、開封率の向上が期待できます。例えばビジネスマンに向けたメールであれば、通勤時間帯や昼休みが効果的でしょう。

ABテストで効果を見極める

受信者の反応を確認することで、どのような件名や本文、配信タイミングが効果的かを判断する材料にできます。ABテストとは、同じ目的を持つ2通のメールを用意し、一部の登録者にテスト配信して結果を比較・検証するマーケティング手法です。ABテストを活用することで、より効果が期待できる最適なパターンを見つけ出すことができます。

メールマーケティングの成功事例

リンナイ株式会社

リンナイ株式会社は給湯機器や厨房機器を製造・販売する大手メーカーです。ECサイト「R.STYLE」ではガスコンロの交換部品を販売していますが、一般の商品と同様のマーケティング手法を採用していたため、過度な営業と受け取られ、退会者の増加が課題となっていました。

そこで、メールマーケティングにおいて「購入した商品の傾向に基づいて顧客をグルーピングし、それぞれに関連する商品をおすすめするメールを配信する」という実証実験を行った結果、メールの開封率は平均約60%、退会率は0.6%に抑えられるなど、大きな効果が得られました。

福岡ソフトバンクホークス

福岡ソフトバンクホークスは、チケット販売部門、通販部門、ファンクラブ管理部門、球場での物販・飲食部門など、各部門ごとに個別に顧客データを管理しており、一貫性のないメール配信が課題でした。

これらのデータを統合し、「週末の試合のチケット購入者に対して、ポップコーンなど飲食物のクーポン券をメールで配布」「球場で観戦した人に、今後開催される試合のチケットを案内する」など、顧客ひとりひとりに合わせた情報発信を行ったところ、クリック率が前年比169%に増加しました。

小林製薬株式会社

医薬品や衛生用品を企画・販売する小林製薬株式会社は、以前は全顧客に対して同一の広告メールを送信していました。しかし、メール配信を売上につなげることを目的として、ターゲティングメールの配信を開始しました。

顧客データを分析した結果、より成果が見込める客層と反応が得られにくい客層の間では、購買率に16倍、メールの解除率に6倍の差があることが判明しました。そこで、より効果が期待できるターゲットに絞ってメールを配信したことで、配信精度の向上とコスト削減を実現しました。

メールマーケティングを始めるために必要な配信ツール

大量のメール配信や、到達率、開封率、クリック率などの検証などを行うメールマーケティングには、専用のメール配信ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールが必要です。

どちらも無料版から月額費用数万円のもの、導入費用がかかるものなどがあり、性能も様々です。無料版を試したり、コストや必要な機能を比較検討し、自社にあったツールを活用しましょう。

関連リンク:「メール配信ソフトとは?メリット・デメリットや選び方のポイントをご紹介

メールマーケティングを始めるなら「KDDI Message Cast」

「KDDI Message Cast」は、携帯電話番号を使った法人向けのメッセージ配信ツールです。1通当たり660文字までのSMS配信に加え、画像や動画などのリッチコンテンツが送れる「+メッセージ」の配信も可能。さらに、AIによるSMSメッセージの自動生成および自動送信のオプションサービスもご利用いただけます。

初期費用、月額費用、最低保証金額などが不要で、送信通数に応じた従量課金制のため、いつでも気軽にメッセージ配信を始めることができます。

メールマーケティングの導入をご検討中の方は、ぜひお問い合わせください。

まとめ

1978年に始まったとされる歴史あるメールマーケティングは、情報技術の目覚ましい進化が続く現在でも、市場を拡大し続け、大きな実績を上げています。

顧客ひとりひとりに寄り添ったコミュニケーションが求められる時代の中、メールによるプロモーションは効果的なマーケティング戦略のひとつと言えるでしょう。

ぜひこの記事を参考に、メールマーケティングの活用に取り組んでみてください。