【2025年版】自動車DXの最新トレンド｜CASEとサプライヤー改革の全貌

そもそもDXとは？

DX（デジタルトランスフォーメーション）は「デジタル技術の浸透が人々の生活にさまざまな良い変化や影響をもたらしている」という意味を持つ概念です。狭義では「デジタル技術の活用により変化しやすいビジネス環境に対応し、事業やビジネスモデルを変革し、競争優位性を確立する」ことを指します。

DXが重要視される理由

DXが注目される背景には複数の要因があります：

• 2025年の崖：IT人材不足とシステム老朽化により、2025年から年間最大12兆円の経済損失が予想されています
• 消費行動の変化：ITの進歩に伴う消費者ニーズへの対応が必要
• 新ビジネスモデルの創造：サービスから組織構造まで抜本的な変革が求められています

デジタイゼーション（作業のデジタル化）やデジタライゼーション（既存ビジネスモデルの変革）とは異なり、DXはより包括的な内部改革を目指しています。

自動車DXの現状と問題

日本のDX導入の現状

世界デジタル競争力ランキング（2020年）によると、日本は6位であり、他のG7先進国より遅れています。特に以下の項目で63か国中最下位です：

• 国際経験
• 機会と脅威
• 企業の機敏性
• ビッグデータの活用と分析

自動車業界も同様に、欧米と比較してデジタル化が遅れており、特に「攻めるDX」（ビジネス創出）で差をつけられています。

出典：2 DXの重要性と我が国におけるDXの現状｜国土交通白書2021

DX導入時の課題

1. デジタル人材の不足

DXを推進できる知識と実装スキルを持つ人材が不足しており、デジタル人材の育成が急務です。

2. サイバーセキュリティ

インターネット活用に伴うサイバー攻撃のリスクが増加。セキュリティリテラシーがなければビジネスモデルや信頼を守れません。

3. DX導入が目的化している

本来は手段であるDXが目的化すると、ビジネスの本質的な目標が曖昧になり、失敗につながります。

自動車のDX①「CASE」

CASEはドイツダイムラーのCEO提唱した造語で、以下の4つの要素から構成されます：

C：Connected（コネクテッドカー）

車に通信技術を搭載し、IoT技術を活用して車とユーザーがネットワークでつながる仕組みです。

トヨタ自動車の例：「コネクテッドサービス」でほぼ全ての車に車載通信機（DCM）を搭載。機能としては：

• 事故発生時の緊急通報
• スマートフォンでの車両位置確認
• 盗難時の位置情報追跡

日産自動車の例：マイクロソフトと提携した「NissanConnect」では、スマートフォンアプリでドアロック操作やバッテリー残量確認が可能です。

A：Autonomous（自動運転）

自動運転は認知・判断・制御の3つの動作から構成され、5つのレベルが設定されています：

• レベル1：ハンドル操作またはアクセル・ブレーキ操作のどちらかの自動実行
• レベル2：ハンドル操作またはアクセル・ブレーキ操作を組み合わせた制御の自動実行
• レベル3：特定の場所ではシステムがすべてを操作、自動走行が不可の場合は手動で操作
• レベル4：自動走行の継続ができない場合でも安全な状態になるまで自動走行が継続
• レベル5：すべての運転操作を自動実行

海外企業ではレベル3搭載が進んでいますが、法整備の遅れと事故責任に関するルール作りが課題です。

S：Shared & Service（シェアリングサービス）

シェアリングサービスは海外で人気ですが、日本では法律による規制があります。

国内の展開例：

• トヨタ自動車とTimes：月額費用と利用時間分費用で車を利用可能
• 「みんなのタクシー」：AI・IT技術による配車アプリ「S.RIDE」を提供
• スマートフォンアプリで予約・支払い・ドア開錠を実現

E：Electric（電気自動車）

CO2排出削減とパリ協定の2050年目標達成のため、EV化が推進されています。

主な事例：

• 日産：バッテリー不足問題を解決した「リーフ」を発売（走行距離458km）
• ホンダ：EVシフト宣言
• トヨタ：EV化へ動き始める
• Google、Apple、Amazon：車両開発を宣言

課題：電力供給不足が最大の懸念。EVの普及に伴う電力消費増加への対応が必要です。

自動車のDX②「サプライヤー向け」

自動車業界のDX発展に伴い、サプライヤー向けのDX導入も進められています。社内外システムの連携とデータ共有により、不良品やミスの早期発見が可能になります。

しかし製造現場では、いまだに勘や経験に依存する部分が多いのが現状。人手不足が深刻化する中、IoTやAIの導入による効率化と生産性向上が重要です。

自動車DXの導入事例

事例① Volkswagen（フォルクスワーゲン）

独フォルクスワーゲンはCASEのA（自動運転）に注力：

• 2022年に自動車部品最大手と技術提携してソフトウエア開発
• 多数のモデルに「レベル2」運転支援技術を搭載
• 2023年にはレベル3搭載を予定

2021年3月「Power Dayイベント」で「Vehicle to Grid（V2G）」を発表。EVを蓄電池として活用し、再生可能エネルギー活用を実現するコンセプトです。V2G技術により、電気自動車が家庭や電力網へ電力を供給することが可能になります。

参照：ID.4 | SUV | フォルクスワーゲン公式 参照：V2G: how Vehicle-to-Grid works | Volkswagen Group

事例② トヨタ自動車

モビリティカンパニーへの変革を目標にCASEを積極展開：

プラットフォーム構築の成果：

• 工場と現場をつなぐ共有プラットフォーム構築により取り組み件数を増加
• 費用対効果が向上
• サプライチェーン、エンジニアリングチェーンにもIOTを展開

サービス展開：

• 「T‐Connect」（2018年6月スタート）：緊急通報、ナビ音声注意喚起、お役立ち情報検索
• 「Toyota Safety Sense」：衝突被害軽減ブレーキ、追従ドライブ支援機能
• 「TOYOTA SHARE」（2019年～）：入会費・月額費無料のカーシェアリングサービス

参照：IOT機器・クルマでつくるモビリティ社会は”CASE”にあり

事例③ 旭鉄工

トヨタ自動車の一次サプライヤーがIoT・デジタルツールで生産性を飛躍的に向上：

• 製造ラインの1時間当たり生産能力を大幅増加
• 残業・休日出勤を抑制
• 労働時間の大幅低減により年間労務費を削減

参照：製造分野 DX 推進ステップ例｜IPA

事例④ 日産自動車

電気自動車「リーフ」を発売（走行距離458km）：

• バッテリー不足問題を解決
• 自宅充電でフル充電可能
• 蓄電池としても活用可能（節電・災害時電源対応）
• EVならではの加速性能とハンドリング性能が特徴

参照：日産：リーフ Webカタログ トップ

事例⑤ 本田技研工業

2021年3月発売の「レジェンド」は「Honda SENSING Elite」を搭載：

• ハンズオフ機能や渋滞運転機能を追加
• アクセル、ブレーキ、ハンドルの自動制御が可能
• 公道を走るレベル3自動運転車として世界初

参照：「Honda SENSING」がさらに進化 | Honda Stories

SMS送信サービスを活用した自動車DX

車検や点検案内はこれまで電話やメール、DMが主流でしたが、SMS活用とSMS並行利用が増加しています。到達・開封率が高く、コスト効率も優れたSMSはDX化に有効です。

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まとめ

DXは政府も推奨し、あらゆる業界で導入・検討されていますが、日本は先進国より遅れています。特に「デジタル人材の育成が急務」です。

国内大手自動車メーカーはCASEという業務改革法でDXを導入し、成功を収めています。自動車を単なる移動手段ではなく、社会全体を巻き込んだ大規模なDX施策として取り組んでいるのが特徴です。

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